時間がない人は、トップダウン処理はダチョウ倶楽部、ボトムアップ処理はレゴブロックと覚えてください。
トップダウン処理とボトムアップ処理の違いとは?
トップダウンとボトムアップという言葉はビジネスでも使われます。
分かりやすいのでまずはビジネスで考えましょう。
トップダウンは、トップ(社長)が決めたことに社員が従います。組織はトップの考えに従って動きます。
主役は社長です。
ボトムアップは、社員達が自分の考えで動きます。個々の社員の積み重ねで組織が動きます。
主役は社員です。
日本語教育能力検定試験でトップダウン・ボトムアップといえば、聴解・読解授業です。
ビジネスの例でいえば
社長=自分
社員たち=聴解素材・読解素材です。
トップダウン処理とは?
トップダウン処理とは、すでに自分が持っている知識や経験、スキーマに従って新しい情報を処理することです。
主役は自分(の知識と経験)です。
例えば「ミッキー〇ウス」です。
「〇」に何が入るかわかりますか?
……
分かった方はトップダウン処理をしています。
「ミッキーマウス」というすでに知っている言葉に従って、入ってきた情報を処理しています。
『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版』というタイトルの本を見れば、知っている言葉の意味から中身が予測できます。
熱湯風呂の上で『押すなよ! 押すなよ!』と叫んでいる人がいた場合、
知っているいつものパターンなので「ああ、押してほしいんだな」と解釈できます。
そして「ああ、この後、熱湯風呂に落ちて叫ぶんだろうな」と予測できます。
これがトップダウン処理です。
自分がすでに持っている知識を生かして内容を予測したり(スキミング)、すでに知っているキーワードを探したりします(スキャニング)。
トップダウン処理は概念駆動型処理とも言います。
概念駆動型処理とは、自身の知識経験に基づく概念を駆動させて情報を処理すること。
トップダウン処理の例
スキミング
・見出しから記事の内容を予測する(平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題5問3)
・聴解授業の前作業として、聴解素材に関連した絵や写真を見せ、内容を予測させる( 平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題5問1)。
・重要な言葉や文に注目し、他の箇所は読み飛ばして大意を理解する(平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問5)。
スキャニング
・自分にとって必要な情報のみを拾い出す読み方(平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問3)
・新聞記事から自分の知りたい情報を探す。
ボトムアップ処理とは?
ボトムアップ処理とは、細かい1つ1つを積み重ねて全体を理解することです。
レゴブロックをイメージしてください。
1つのブロックだけでは何かよくわかりませんが、
1つ1つのレゴブロックを積み重なることで全体が見えてきます。
ああ、このレゴブロックは『クッパ城』だったのかと。
主役はレゴブロックです。
日本語教育でいえば
主役は、聴解素材・読解素材です。データです。
見たもの聞いたもの(データ)をそのまま受け入れます。
最初は全体が分からなくてもデータを積み重ねることで見えてきます。
字→語→文→段落→全体
細かいデータを積み重ね、次第に大きなまとまりになり、全体の理解につなげます。
ボトムアップ処理はデータ駆動型処理ともいいます。
データ駆動型処理とは、入ってきたデータ1つ1つそのまま駆動させて情報を処理すること
ボトムアップ処理の例
・図や表を用いて詳細を整理しながら読み、文章全体を理解する。
・文章中の指示語が何を意味しているか確認しながら読み進める。
・接続詞に注目し、文と文との関係を考えながら読み進める。
(以上の例は平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問5より)
相互交流モデルとは?
相互交流モデルとは、トップダウンとボトムアップのミックス。地球に優しいハイブリッド。トップダウンさんとボトムアップさんが、お互いの足りないところを補い合って償い合います。理想のカップルですね。補償モデルとも。
既存の知識を使って大意を把握したり(スキミング)、自分の知りたいことを探しますが(スキャニング)(以上、トップダウン)、細部にも目を光らせて1つ1つの意味を積み重ねること(ボトムアップ)で、理解の精度を高めます。
実際の読解や聴解では、トップダウン処理とボトムアップ処理が同時に働いています。
トップダウン処理とボトムアップ処理が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題10問1【ボトムアップの読み方】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題5【トップダウン処理の聴解授業】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題7問3選択肢4【トップダウン】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問5【ボトムアップ的な読みを行う際のストラテジー】
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9【トップダウンとボトムアップで聞く力をつける方法】
・平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11【ボトムアップ処理とトップダウン処理】
・平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題5問3【見出しから記事に内容を予測するのは?】