令和6年度日本語教員試験サンプル問題の解説

日本語教員試験・日本語教育能力検定試験の対策
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このページではご質問のあった日本語教員試験のサンプル問題について解説しています。

サンプル問題は文部科学省のウェブサイトから見ることができます。

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出題内容

出題範囲

 日本語教員試験は、養成修了段階で習得しておくべき必要不可欠かつ基礎的な知識及び技能が網羅的に備わっていることを確認・評価するためのものとする。そのため、出題範囲は「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」( 令和6年3月18日 中央教育審議会生涯学習分科会日本語教育部会決定)の養成課程コアカリキュラムにおける必須の教育内容に示された範囲とする。

 また、日本語教育の活動分野や学習対象者に応じて求められる分野別の専門性については登録日本語教員の資格取得後も継続的に習得されるものであり、現職日本語教員の初任研修の修了段階で求められるものとして位置付けるため、日本語教員試験においては、分野別の専門性に関する詳細な知識等は問わないものとする。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

出題範囲の詳細

社会・文化・地域

 日本語教師として、様々な国・地域からの学習者と関係を築き、教育実践を行うために、その背景となる、日本と諸外国の関係や国際社会の実情及び日本の外国人施策など日本の言語・文化・社会の特徴に関する基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づけて考えることができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

言語と社会

 日本語教師として、学習者を取り巻く社会とことばの関係を常に考え続けるために、学習者が言語活動を行う社会とその社会において実際に使用されている言語との関係や、相互理解・相互尊重のためのコミュニケーションのあり方に関する基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づけて考えることができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

言語と心理

 日本語教師として、学習過程で起こる現象や問題、異文化に適応する際に生じる問題など学習者の内面で起こる問題の理解・解決に取り組むために、言語習得の仕組みや方法、異文化受容・適応に関する基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づけて考えることができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

言語と教育

 日本語教師として学習者の学習活動を支援するために、学習者の属性やニーズ等に応じた効果的な教授・評価の仕組みや、学習者を社会とつなげる様々な方略に関する基礎的な知識を有するとともに、それらを日本語教育の実践とを関連づけて考えることができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

言語

 日本語教師として学習者の日本語によるコミュニケーション能力を伸ばす効果的な教育実践を行うために、日本語及び言語一般に関する基礎的な知識及び教育を通じたエンパワーメントを行うためのコミュニケーション能力を有し、それらを日本語教育の実践に活用することができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より
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問題1(5)【接辞辞「化」の意味】

問題1 次の(1)~(8)について、【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを、それぞれ1~4の中から一つずつ選べ。

(5)【接尾辞「化」の意味】

1 情報化

2 有料化

3 自由化

4 義務化

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

1 情報になること× 情報の活用度が増し情報の価値が高まること(大辞林より)

2 有料になること

3 自由になること

4 義務になること

答えは1

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問題2(4)日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語

問題2 次の(1)~(6)の問いに答えよ。

(4) 次の文章中の空欄(ア)に入れるのに最も適当なものを、次の1〜4の中から一つ選べ。

 文部科学省が令和3年度に実施した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」によると、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は4万7千人以上にのぼる。これらの児童生徒を言語別に見ると、(ア)母語話者が最も多い。

1 中国語

2 ベトナム語

3 フィリピノ語

4 ポルトガル語

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

時事問題は下記のページにまとめている。

1位 ポルトガル語

2位 中国語

3位 フィリピノ語

4位 スペイン語

答えは4

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問題3

(3)メタ認知ストラテジー

問題3 次の(1)〜(11)の問いに答えよ。

(3)言語学習において、学習者は学習を促進するための様々なストラテジー(方略)を用いると言われている。このような学習ストラテジーのうち「メタ認知ストラテジー」の例として最も適当なものを、次の1 ~ 4の中から一つ選べ。

1 教師に質問し説明を求める。

2 テキストの文脈から意味を推測する。

3 学習計画を立てて、随時進捗を確認する。

4 目的に応じた聞き方や読み方を選択する。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

メタ認知ストラテジーなどの学習ストラテジーについては下記のページにまとめてある。

1 教師に質問し説明を求めるのは社会的ストラテジー

2 テキストの文脈から意味を推測するのは補償ストラテジー

3 学習計画を立てて随時進捗を確認するのはメタ認知ストラテジー

4 目的に応じた聞き方や読み方を選択するのは認知ストラテジー

答えは3

(9)コード・スイッチング

問題3 次の(1)〜(11)の問いに答えよ。

(9)コミュニケーション・ストラテジーの一つであるコード・スイッチングが起こっているとは言えない例を、次の1 ~ 4の中から一つ選べ。

1 ダイグロシア社会において、二人の話者がそれぞれ別の言語を話しているが、コミュニケーションが成り立っている。

2 バイリンガル話者の中にモノリンガル話者が一人含まれている会話において、話の途中でバイリンガル話者がモノリンガル話者の理解できない言語で話し始めた。

3 マルチリンガル話者が一つの言語でスピーチをしていたが、民族のアイデンティティを示すために途中で別の言語で話し始めた。

4 友人同士が地域で日常的に使用する方言で話していたとき、一人がもう一人に頼み事をしたが、相手は方言ではなく公的に使われている共通語を使って断った。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

コード・スイッチング平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12の大問で詳しく説明されているので一度読んでおくとよい。

 二言語話者(バイリンガル)文や談話の中で二言語を切り替えることコード・スイッチングと言う。これは、「交差点で車がエンストしてしまった」のように、一言語話者(モノリンガル)が外来語を交えながら話すのとは本質的に異なる…

平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12

1 二言語を切り替えていないのでコード・スイッチングではない

2 二言語を切り替えているのでコード・スイッチング

3 二言語を切り替えているのでコード・スイッチング

4 方言から共通語に二言語を切り替えているのでコード・スイッチング

答えは1

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問題13

問1 シラバス

 実際に日本語の授業を実施する際には、コースデザインを行う。調査・分析の段階では、学習者や教師、学習環境について把握することが重要である。コース目標の設定、aシラバスやカリキュラムデザインに関わるためである。

 近年、文化庁によってb「日本語教育の参照枠」が策定され、その使い方が取りまとめられた。そこでは、c行動中心アプローチの考え方に基づく言語能力記述文(can do)をベースとしたカリキュラムデザインの考え方として、dバックワード・デザイン(逆向き設計)が紹介されている。日本語教師には学習者の目的・目標に合った内容と教え方を選ぶこと、学習目標の達成状況を確かめるための評価方法を決めることが求められる。学習目標の到達度を評価する方法には、「言語知識を測るテスト」、e「パフォーマンス評価」などがある。

問1 文章中の下線部a「シラバス」とその特徴の説明として不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より
シラバス特徴
1 機能シラバス「読む」「書く」「話す」「聞く」を中心にさらに細かく分類して学習項目を一覧にしたもの。
2 構造シラバス文型や文法を中心に易しいもの、単純なものから難しいもの、複雑なものへと体系的に整理して学習項目を一覧にしたもの。
3 話題シラバス学習者の興味・関心や社会情勢に応じて話題を決め、話題に関する語彙や表現などを一覧にしたもの。
4 課題シラバス何かの課題の達成のために必要な文型や、語彙、社会文化的知識、技能等を一覧にしたもの。
令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

シラバスは下記のページでまとめている。

YouTube動画解説もあります。

1 「読む」「書く」「話す」「聞く」という4技能にわけるのは技能(スキル)シラバス

機能シラバスとは、「許可を求める」「依頼する」「謝罪する」など言葉の機能に着目し、機能ごとに分けたシラバス。

【日本語教員試験】シラバスの種類【日本語教育能力検定試験の対策】より

2 文型や文法を中心に易しいもの、単純なものから難しいもの、複雑なものへと体系的に整理して学習項目を一覧にしたのは構造シラバス

3 学習者の興味・関心や社会情勢に応じて話題を決め、話題に関する語彙や表現などを一覧にしたのは話題(トピック)シラバス

4 何かの課題の達成のために必要な文型や、語彙、社会文化的知識、技能等を一覧にしたのは課題(タスク)シラバス

答えは1

問2 日本語教育の参照枠

問2 文章中の下線部b「日本語教育の参照枠」に関する記述として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 4技能について、バランスよく能力を伸ばすことが望ましいとされている。

2 漢字に関しては、常用漢字表を基にレベル別の基礎漢字の目安が示されている。

3 言語能力記述文では「母語話者」ではなく、「熟達した日本語話者」が使われている。

4 「特定技能」の資格等で来日する人に求められる基礎的なコミュニケーション力を育成する。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

文化庁「日本語教育の参照枠」報告について

文化審議会国語分科会 令和3年10月12日『日本語教育の参照枠 報告』

日本語教育の参照枠は、令和5年度日本語教育能力検定試験でも出題されている。生活、就労、留学といった外国人の活動状況に応じた日本語教育の基準や目標を定めることが容易になるよう取りまとめられた。これからの日本語教育を担う日本語教師として一度は目を通しておきたい。

一人で読むのは辛いという人にはこちらの動画で一緒に読もう。

1 × バランスは重視していない

「日本語教育の参照枠」では、五つの言語活動をバランスよく学んでいくことよりも、個人にとって必要なことから学んでいくことを重視する

日本語教育の参照枠p17より

2 × 常用漢字表を基にしていない。

〇 日本語学習者を社会的存在として捉えるという「日本語教育の参照枠」の理念から考えると、生活・留学・就労などの分野や学習者が置かれた状況や年齢、生活様式等によって必要な漢字や語彙は異なることから、レベルごとの単漢字数や熟語数を一律に定め、示すことは難しい

〇 しかし、特に日本社会で生活する者には、安全安心で文化的な生活を送り、社会に参加する上でも、平仮名・片仮名・漢字・ローマ字などの文字に対する理解が不可欠であり、一定程度の習得(学習)が望まれることから、「日本語教育の参照枠」において、漢字学習の基礎となる基礎漢字の目安や漢字学習の方針を示すこととする。

〇 基礎漢字の検討に当たっては、日本語教育の主教材や漢字指導教材等から抽出した基礎漢字調査を材料として、特に「基礎段階の言語使用者」であるA2までの基礎漢字の目安を示すこととする。

日本語教育の参照枠p66~67より

3 ○

「日本語教育の参照枠」では、「全体的な尺度」、「言語活動別の熟達度」及び他の言語能力記述文の中に見られる「母語話者」という表現を修正した。言語教育観の柱として「母語話者が使用する日本語の在り方を必ずしも学ぶべき規範、最終的なゴールとはしない。」(6ページ)ということを掲げているためである。CEFR補遺版においても「母語話者」という表現は修正されており、修正後の文言についてはCEFR補遺版を参考に、「熟達した日本語話者」と言い換えた。

日本語教育の参照枠p12より

4 × 「特定技能」の資格等で来日する人に求められる基礎的なコミュニケーション力をまとめているのは「JF生活日本語Can-do

独立行政法人国際交流基金がCEFRを参照し作成した「JF日本語教育スタンダード」(参考資料3参照)において示されているJF Can doの他、生活分野の言語能力記述文として、日本語を母語としない外国人が在留資格「特定技能」等で来日する場合、日本での生活場面で求められる基礎的な日本語コミュニケーション力を「JF生活日本語Can-do(JF Can-do for Life in Japan)」として381項目にまとめている。

日本語教育の参照枠p14より

答えは3

問3 行動中心アプローチ

問3 文章中の下線部c「行動中心アプローチ」における言語教育観に関する記述として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 母語習得の過程に注目し、教師は沈黙し、学習者の知性の発揮と自立を助ける観察者、助言者となる。

2 学習者にとって必要な活動に注目し、学習者が日本語を使ってさまざまな社会的な活動に参加していくことを目指す。

3 学習者が話したい内容を自由に話し、話し合い後に、発話の録音を再生し、表現の確認、発音や文法の指導をする。

4 媒介語による翻訳を行わず、聴解力を重視し、教師のさまざまな命令や指示を聞いて、学習者が全身で反応するという方法を用いる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

行動中心アプローチについては下記のページでまとめている。

○ 「日本語教育の参照枠」では、6ページのとおり、言語教育観として三つの柱を挙げており、全ての指標はこの考えに基づいて示されている。

1 学習者を社会的存在として捉える。

2 言語を使って「できること」に注目する。

3 多様な日本語使用を尊重する。

○ この三つの言語教育観の柱は、CEFRにおいて、社会的存在(social agents)、部分的能力(partial competences)、複言語主義(plurilingualism)として示されている概念を参考にしつつ、日本語教育の文脈から捉え直したものである。

○ これら三つの概念を基盤として、CEFRは、行動中心アプローチ(actionoriented approach)を示している。行動中心アプローチとは、多様な背景を持つ言語の使用者及び学習者を、生活、就労、教育等の場面において、様々な言語的/非言語的な課題(tasks)を遂行する社会的存在として捉える考え方のことである。

○ 行動中心アプローチにおける言語教育の目標とは、言語の使用者及び学習者がそれぞれの社会で求められる課題を遂行できるようになることである。したがって、学習者は、文法や語彙の難易度、言語活動間のバランスにかかわらず、課題を遂行するために必要な事柄から学ぶことができる。

日本語教育の参照枠p10より

1 「母語習得の過程に注目し、教師は沈黙」といえば、サイレントウェイ

2 学習者にとって必要な活動に注目し、学習者が日本語を使ってさまざまな社会的な活動に参加していくことを目指すのは、行動中心アプローチ

3 学習者が話したい内容を自由に話し、話し合い後に、発話の録音を再生し、表現の確認、発音や文法の指導をするのはCLL(コミュニティ・ランゲージ・ラーニング/コミュニティ言語学習法)

4 媒介語による翻訳を行わず、聴解力を重視し、教師のさまざまな命令や指示を聞いて、学習者が全身で反応するという方法を用いるのは全身反応教授法(TPR)

答えは2

問4 バックワード・デザイン(逆向き設計)の手順

問4 文章中の下線部d「バックワード・デザイン(逆向き設計)」の手順として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 到達目標の決定→評価方法の決定→学習内容と教え方の決定

2 到達目標の決定→学習内容と教え方の決定→評価方法の決定

3 評価方法の決定→到達目標の決定→学習内容と教え方の決定

4 学習内容の決定→到達目標と評価方法の決定→教え方の決定

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

長文問題は文章にヒントが隠されている。

下線部dの次がヒントになる。

「日本語教師には学習者の目的・目標に合った内容と教え方を選ぶこと、学習目標の達成状況を確かめるための評価方法を決めることが求められる」

つまり、「内容と教え方」が「学習者の目的・目標」に合っていないといけないので、

学習者の目的・目標の把握→内容・教え方を決める

の順番になる。

答えは1か2

また「逆向き」という言葉もヒントになる。

教師視点で始めると

①(教師が)教え方・教える内容を考える→②(教師の)評価方法を考える→③(学習者の)到達目標を考える

これを逆向きにして学習者視点で始めると

③まず、学習者の到達目標を考える

②次に、目標に到達するには教師がどのように評価すればいいか考える(例:JLPTに受かりたいならJLPTの問題ができることを評価する。コミュニケーションが上達したいなら言いたいことが伝えられることを評価するなど)

③最後に、評価方法から学習内容や教え方を決める(例:JLPT問題を解いて解説。学習者の好きなトピックで会話)

例のように具体的に考えるとわかりやすい。

答えは1

問5 パフォーマンス評価

問5 文章中の下線部e「パフォーマンス評価」に関する記述として不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 学習者にロールプレイやエッセイなどの言語的な課題を与え、その遂行の度合いを評価することができる。

2 評価の観点を明示することで、個人的な価値判断による影響を避け、達成すべき目標を学習者と共有することができる。

3 単に、「できた・できない」だけの評価だけでなく、「何がどのくらいできたのか」について、多様な観点から評価を行うことができる。

4 学習者が創造した作品や評価記録を収集し、それをもとに学習過程をふり返ることで学習成果の評価のツールとして使うことができる。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

パフォーマンス評価といえばルーブリックも要チェック

 パフォーマンス評価とは、学習者に例えばロールプレイやエッセイなどの言語的な課題を与え、その遂行の度合いを評価することをいう。パフォーマンス評価は到達度、あるいは熟達度を測る試験として実施する場合と、試験によらない評価として実施する場合がある。

 日本語教育においては産出(「話すこと(やり取り)」、「話すこと(発表)」、「書くこと」)についての到達度熟達度を測ることが多い。特に就労場面における産出についての熟達度を測ることについては、社会的に高いニーズがある。パフォーマンス評価の利点は以下のとおりである。

・ 単に、「できた・できない」だけの評価だけでなく、「何がどのくらいできたのか」について、多様な観点から評価を行うことができる。

・ 教師と学習者の双方がパフォーマンスに関する評価基準を共有することで、評価の透明性を高めることができる。

・ 学習者は与えられたパフォーマンス課題に対して、評価基準を基にした明確なフィードバックを得ることができる。

 パフォーマンス評価を行う際には、ルーブリックによる評価を行う場合がある。ルーブリックとは、例えば言語的課題(例えば「家族を紹介する」などの言語的タスク)の達成度と文法的正確さや使用語彙の範囲、発音などの質的側面等の観点を組み合わせた評価基準表のことをいう。ルーブリックによる評価の利点は以下のとおりである。

・ 評価の観点を明示することで、個人的な価値判断による影響を避け、達成すべき目標を学習者と共有することができる。

日本語教育の参照枠p80より

1 ○パフォーマンス評価とは、学習者にロールプレイやエッセイなどの言語的な課題を与え、その遂行の度合いを評価すること

2 ○評価の観点を明示することで、個人的な価値判断による影響を避け、達成すべき目標を学習者と共有することができる

3 ○単に、「できた・できない」だけの評価だけでなく、「何がどのくらいできたのか」について、多様な観点から評価を行うことができる

4 ×学習者が創造した作品や評価記録を収集し、それをもとに学習過程をふり返ることで学習成果の評価のツールとして使うことができるのはポートフォリオ

ポートフォリオ令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題8問5で出題されているので目を通しておく。

答えは4

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応用試験2(読解)問題7 ロールプレイ

問題7

 大学の交換留学生を対象とした日本語会話クラスで、以下のようなロールプレイを実施した。資料1〜3を読み、後の問い(問1〜5)に答えよ。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

問1 タスク先行型ロールプレイ

問1 この授業のように、文型や表現の導入よりも先にロールプレイを行うタイプのロールプレイ(タスク先行型ロールプレイ)の長所として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 既習項目と未習項目の差が見えやすいので、効率的に学習できる。

2 決まった表現を使わなくてもよいため、文化的なルールの強制を避けることができる。

3 事前に言語項目を練習する必要がないので、学習者の心理的な負担が軽減される。

4 「言いたいけれどうまく言えない」というタスクの過程から、表現についての学習者の気づきが促されやすい。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

タスク先行型ロールプレイについては下のページでまとめてある。

1 ×既習項目と未習項目の差が見えやすいのは、事前に未習の表現や語彙を学ぶタスク後攻型

2 ×決まった表現を使わなくてもよいことと文化的なルールの強制は関係ない。例えば、日本人の家を訪問するというロールプレイで日本人から靴を脱ぐよう促された場合、文化的なルールの強制と感じるかもしれない。タスク先行型か後攻型かは関係ない。

3 ×事前に言語項目を練習する必要はないが、「言いたけれどうまく言えない」という心理的負担がある。

4 ○「言いたいけれどうまく言えない」というタスクの過程から、表現についての学習者の気づきが促されやすい。

答えは4

問2 ウォーミング・アップ

問2 資料2の下線部a「ウォーミング・アップ」として行うのに最も適切なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 このロールプレイのモデル会話をまず音声で聞く。

2 許可を得る表現「~てもいいですか」の口慣らしを行う。

3 ロールプレイの内容に影響しないよう、あえて関係のない話をする。

4 授業を休んだ経験やその理由、そのとき先生に事前に話したかなどについて聞く。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

1 ×モデル会話の音声を先に聞いてしまうとロールプレイではなくモデル会話の復唱になってしまう。

2 ×表現を先に練習するのはタスク後攻型

3 ×ウォーミング・アップは関係ある話をしてスキーマを活性化させる。

4 「授業欠席の許可を得る」というロールプレイに関係する「授業を休んだ経験やその理由」などを聞くのはウォーミング・アップになる。

答えは4

問3 ロールプレイの問題点

問3 この授業で行ったロールプレイの問題点には当たらないものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 学習者Aには身近な状況だが、学習者Bには自分の実際の生活で行う言語行動ではない発話の練習になってしまう。

2 ロールカードAには、状況と話す内容しか書かれておらず、どうなれば会話を終わってよいかがわからない。

3 ロールカードBにはこれから何が起こり、どう回答すべきなのかが書かれてしまっており、会話の展開を考える余地がほとんどない。

4 この状況設定では、「休んでもいいですか」「休ませていただけませんか」「休みたいのですが」など、使用できる表現がいくつか考えられてしまう。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

1 学習者Bは先生の役割なので、自分の実際の生活で行う言語行動ではない発話の練習になってしまっている。

2「許可を得る」とまで書かれていないので会話のゴールがわからない。

3 「欠席の報告を聞いたら理由を聞いて許可する」とすべきことが全て書かれているので会話の展開を考える余地がほとんどない。

4 表現が複数考えられるのはロールプレイでは当たり前のことであり問題点ではない。

答えは4

問4 コメントに対する教師の対応

問4 資料2の下線部b「クラスで気づいたことをコメントし合う」について、コメントとそれに対する教師の対応として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 「あのう」や「えーと」といったフィラーが目立ったというコメントに対し、フィラーの適切な量やフィラーの効果などについてクラス全体で考え、2回目の発表に生かすよう促した。

2 イントネーションが不自然で怒っているように聞こえるというコメントに対し、音声的な癖は、許可を求めるというこのロールプレイの目的には関係ないとして、気にしなくてよいと励ました。

3 欠席することを伝える際に、ポケットに手を入れたままだったことを指摘するコメントに対し、確かに失礼になりかねないが、クラスでは言語についてのコメントに限定しようという方針を全体で共有した。

4 声が小さく話し方が大学の先生らしくないというコメントに対し、大学の先生らしい話し方についてクラス全体で考え、2回目の発表では気をつけるように促した。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

1 ○フィラーは大切。詳しくは下の記事を参照

2 イントネーションが変で怒っているように見えたら許可がもらえないかもしれないので気にすべき

3 言葉だけじゃなく態度も大切

4 問3の選択肢1で書かれていたように「大学の先生」は自分の実際の生活で行う言語行動ではない発話なので時間をかけるべきではない。

答えは1

問5 フィードバック

問5 資料3の学習者ペアの会話の問題点をフィードバックする際、指摘する必要性のないものを、次の1~4の中から一つ選べ。

1 学習者Aはあいさつの後すぐに許可を求めるのではなく、「今、ちょっといいですか」などの表現を使ったほうがよい。

2 学習者Aは一度にすべての要件を伝えるのではなく、まず「来週の授業のことなんですが。」でいったん文を切るなど、いくつかに分けて事情を説明したほうがよい。

3 学習者Bはすぐに許可を出すのではなく、学習者Aが「休んでもいいですか」など許可を求める表現を使うまで待ったほうがよい。

4 学習者Bの「いいですよ」で会話を終わりにするのではなく、二人がどのように会話を終わらせるのかまでそれぞれ考えたほうがよい。

令和6年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題より

1 実際の会話のように「今、ちょっといいですか」などの前置き表現を学ぶことも大切。

2 会話はキャッチボール。自分の言いたいことをだけを一気に言うのではなく、いくつかに分けて相手の反応を見ながら事情を説明すべし。

3 実際の会話でも、許可を求める表現を使わなくても、相手の事情を察して許可を出すことがあるので、待つ必要はない。

4 「いいですよ」という許可を出す表現で終わるのではなく、それに対して感謝を述べるなどリアルな会話がどのように終わるか考えた方がよい。

答えは3

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