学習ストラテジー(学習方略)に関連する問題は毎年のように出題されていますので、学習ストラテジーの意味を理解することは非常に重要です。
学習ストラテジーの意味
学習ストラテジーとは、学習するときの工夫のこと
日本語教育能力検定試験では「ストラテジー」という言葉がよく出てきますが
「ストラテジー=工夫」
という理解でOKです。
学習ストラテジーには①言語学習ストラテジーと②コミュニケーション・ストラテジーの2つの種類があります。
言語学習ストラテジーとは、言語学習に用いる工夫
コミュニケーション・ストラテジーとは、コミュニケーションを成立させるために用いる工夫
この記事では言語学習ストラテジーについて説明します。
言語学習ストラテジーの種類
言語学習ストラテジーは、オックスフォードの分類によると、以下の6つの種類に分けられます。
①記憶ストラテジー
②認知ストラテジー
③補償ストラテジー
④メタ認知ストラテジー
⑤情意ストラテジー
⑥社会的ストラテジー
①~③が直接ストラテジー
④~⑥が間接ストラテジー
直接ストラテジーとは?
直接ストラテジーとは、学習に直接かかわるストラテジー
記憶ストラテジー
記憶ストラテジーとは、語彙や文法を覚えるときの工夫。
情報の想起が重要となるもの。
記憶ストラテジーの例
・年号を語呂合わせで覚える。
・日本語と母語の似ている部分を結びつけて覚える。
・単語カードを使ってキーワードを覚える。
・授業で学んだ文型や表現を、翌日に必ず大学の図書館で復習をして暗記する。
認知ストラテジー
認知ストラテジーとは、…分かろうとする時の工夫。
自分に理解しやすいよう分析したりする。
認知ストラテジーの例
・メモを取る。
・重要な語に線を引く。
・知らない語を辞書で調べる。
・長い文章を書くときは、まず母語で文を作りそれを日本語に訳して作文する。
補償ストラテジー
補償ストラテジーとは、知識不足を補う工夫
補償ストラテジーの例
・身振り手振りで表現するなどの非言語行動で補う
・未習語の意味を文脈から推測
・「切手」を「はがきや封筒に貼る小さな紙」のようにほかの言葉で表現する。
間接ストラテジーとは?
間接ストラテジーとは、学習を間接的に支え、習得のための条件を整えるための工夫
メタ認知ストラテジー
メタ認知とは?
メタ認知とは、高次の認知、認知の対象を超えた認知、認知していることを認知することです。
わかりにくいですね。
ご安心を。
一発でメタ認知が分かる絵を用意しました。
素敵な絵ですね?
「本を読む」のが認知です。
「自分は今本を読んでいるなあ」と自分を客観的に見ることがメタ認知です。
「勉強する」のが認知です。
「今日は10時間勉強したなあ」と自分の勉強を客観的に見るのがメタ認知です。
自分を自分の外から見るのがメタ認知です。
自分を自分の頭の上から見るイメージです。
対象を外から捉えること、対象の世界を超えることをメタ認知といいます。
たとえば、記述問題を見て、
「ああ難しい」
「ああ簡単だ」
と考えるのは、ただの認知です。
合格するためには認知を超えましょう。
「どうして出題者はこの問題を作ったのだろう?」
「どんな記述を書けば、添削者が読みやすいだろうか?」
これがメタ認知です。
対象をそのまま捉えるのではなく、外から客観的に見るのです。
私がメタ認知した例
先日、ブログから下記の問い合わせが来ました。
これを見て最初に私は嫌な気持ちになりました。
これを書いた人も、何らかの原因で私に怒り・恨み・嫉み・妬み等のマイナス感情を抱き、これを送ってきたのでしょう。
これが認知能力です。
ここから私はメタ認知能力を発動させました。
行動に迷いが生じた時
憧れの男・なりたい男を参考にします。
ドラゴンボールの孫悟空です。
孫悟空だったら、こんな時どうするか?
このような問い合わせに対して、怒りの反応を示すか?
しないですよね。
そんな格好悪い孫悟空は見たことがない。
見たくない。
その悟空ならこう言うはず。
「オラ、もっと強えやつと戦いてえ」
日本語教育業界で「強えやつ」と言えば国際交流基金です。
実際にいま私が一番怒っているのは
不公平すぎるJLPTであり
それを主宰している国際交流基金です。
孫悟空だったら
強えやつと戦うことしか眼中にないはず。
そう考えると私の嫌な気持ちは薄れていきました。
これがメタ認知能力の効果です。
わたしは、さらにメタ認知能力を発動させました。
自分だったらこのような問い合わせを送るだろうか?
いや、送らない。
この問い合わせをメタ認知すると自分が情けないことに気づくからだ。
私が怒りを感じた時は
相手と戦いたいので
①匿名にしない
②具体的な問題点を指摘する
③具体的な改善策を提示する
しかし、この問い合わせは、
①匿名であり、かつメールも「hamasensei@gmail.com」となっている。
これは私のメールアドレスではなく問い合わせて来た人のメールアドレスだ。
つまり問い合わせてきた人は、私を嫌な気持ちにさせるために、今回のためだけに、わざわざ、「hamasensei@gmail.com」というメールアドレスを取得したのである。
あるいはそもそも取得しておらず、嘘のメールアドレスを記入したのである。
悲し過ぎないか。
私だったらそんな時間があれば勉強するのに。
自分のメールアドレスから送ってくればいいのに。
それが怖くてわざわざ捨てアカウントを作る。
これをメタ認知できなかったのだろうか。
これらの行いを自分が憧れる映画や小説の主人公がすると思うのだろうか?
匿名で
相手が返信できないよう嘘のメールアドレスを使って
安全な場所から
しかも具体的な問題点の指摘が一切ないので
改善のしようがない。
私も間違えることはある。
だから、この点がおかしい
と言ってくれれば
検討できる。
だが具体的なことが何も書かれていない上に
メールも明らかに本物ではないので返信もできない。
つまり害にしかなっていない。
私にとっても
社会にとっても
これを書いた人にとっても
メタ認知すればわかることなのに。
このような行動をする人は
映画やドラマだとどんな役割の人か?
正々堂々と戦えず卑怯な手段を使う
雑魚キャラムーブじゃないか。
メタ認知能力を使わないと
自分がやっていることを客観視できないのだ。
と偉そうなことを言ってしまったが
私にもやらかした過去があるので最後に紹介したい。
以前、インフルエンサーの動画作成をお手伝いしていたことがあった。
インフルエンサーなのでファンもすごいがアンチ(悪意のあるコメントをする人)もすごい。
動画には毎回アンチからのコメントも来ていた。
インフルエンサーはファンからの暖かいコメントには返信しないのに
アンチからのコメントにばかり返信していた。
誤解されてりして、ムカつくからだ。
それを見て私は言った。
「あなたの貴重な時間をアンチに使うべきではない。ファンのために使うべきだ。アンチは現実世界が充実していない寂しい人だから、インターネットの匿名社会で、他の人に悪意を向けちゃうんだよ。リアルが充実している人はそんなことしている暇はないよね。可哀想な人だと思って無視しなさい」
何度も言った。
ところが、だ。
自分がYouTube動画やTwitterを始め
そこそこの人が見てくれるようになり
初めてのアンチコメントが来たとき
私は顔を真っ赤にして猛烈に反論しようとしていた。
「この人は全然わかってない! 誤解している伝えなきゃ!」
インフルエンサーには
「アンチは無視しろ」
と言っていたのに。
いざ自分の番になると
たった1人のアンチに狼狽えていた。
メタ認知は本当に難しい。
これからも気をつけたい。
メタ認知ストラテジーの例
・意図した内容と言語表現にずれがないか自分でチェックする(令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問2)
・ 発話時のエラーで意思疎通に支障を与えるものを見定めて、その原因を考え、なくすようにした(平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問3)
・目標を決めて授業にのぞむ。
・予習して授業にのぞむ。
・学習目標と達成期限を設定する。
・効果的な勉強法や教材に関する情報を収集する。
・スピーチ本番の前に録音して、出来をチェックする。
・書いた文章を自分で読み返して、間違いを修正する。
・自分なりに学習計画を立て、学習の進み具合やその効果を適宜チェックする。
情意ストラテジー
情意ストラテジーとは、情意面(心)を調整するための工夫
情意ストラテジーの例
・自分を褒める。「俺は長男だから我慢できた。俺は今までよくやってきた。できる奴だ!」
・クラシックを聞いてリラックスする。
社会的ストラテジー
社会的ストラテジーとは、学習のために周囲の環境や他者を利用する工夫
社会的ストラテジーの例
・分からないところを先生や友達に尋ねる。
・成績の良い同級生からアドバイスをもらう。
・聞き手の反応に配慮する。
・日本語だけでなく日本の社会や文化についても吸収するよう努力する。
尹智鉉『日本語学習者の第二言語習得と学習ストラテジー』は、各学習ストラテジーの意味と具体例が記載されていますので、とても参考になります。
学習ストラテジーが出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和5年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問1【学習ストラテジーの類例とその例】
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題7問3【学習者が目標設定、計画、実行、評価というサイクルを繰り返す】ために必要な能力は? 選択肢4【メタ認知能力】
・令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9【2021】問2【学習ストラテジーに含まれるストラテジーとその例】選択肢4【補償ストラテジーの例:文脈から分からない語を推測する】
・令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問2【メタ認知ストラテジーの例】選択肢3【意図した内容と言語表現にずれがないか自分でチェックする】
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問5選択肢1【数学等の概念的知識や学習ストラテジーは、二言語間で転移する】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9【第二言語習得】問3【直接ストラテジーの例】選択肢3【習ったことをまとめたり、繰り返し練習したりする】
・平成27年度 日本語教育能力検定試験Ⅰ問題10問5【補償ストラテジーの例】選択肢2【知らない語の意味を文脈から推測する】
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問3【メタ認知ストラテジーの例】→発話時のエラーで意思疎通に支障を与えるものを見定めて、その原因を考え、なくすようにした。
・平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問4選択肢3【メタ認知ストラテジー】
コメント
[…] […]