音素とは
音素とは、意味を区別する最小の音の単位です。
意味を区別する?
ちょっと意味がわかりません。
たとえば、英語は r と l では意味が違いますね。
rockは岩
lockは「ドアをロックする」のロック
このとおり、r と l は意味を区別するのでそれぞれ別の音素になります。
rockとlockのように音素が1つだけ違う異なる単語のペアをミニマルペアと言います。
英語では、r とl で2音素です。
ところが日本語では r と l は意味を区別しません。
raamen
laamen
どちらも「ラーメン」という意味です。
なので、日本語では、r と l で1音素です。「ラ行」です。
日本語では英語の”right”と”light”のような子音の違いが自由変異の関係にある異音となることから、学習者にとってラ行子音の習得は易しいと思われがちだが、中国語広東方言話者にはラ行・ダ行・ナ行の子音の区別がつきにくいという問題があり、決して容易とはいえない。
異音とは
構造言語学における異音とは、同じ音素に属する異なる音のこと
日本語の異音の例
音素/s/(サスセソ)の異音は[S][θ]
音素/r/(ラ行)の異音は[ r ][ ɾ ][ l ]
自由異音とは
自由異音とは、自由に現れることのできる異音のこと
日本語の自由異音の例
・音素/s/(サスセソ)の自由異音は[s][θ]
・音素/r/(ラ行)の自由異音は[ r ][ ɾ ][ l ]
語中で鼻音化するガ行の子音
・語中で鼻音化するガ行の子音(平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3C(12))
音素/g/(ガ行)の自由異音は[ g ][ ŋ ]
日本語のザ行子音における[z]と[ð]
・日本語のザ行子音における[z]と[ð](平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1問2)
条件異音とは
条件異音とは、現れる条件が決まっている異音
日本語の条件異音の例
直前の音によって変化する長音
長音/R/とは、伸ばす音「ー」のこと。引く音、引き音ともいいます。
直後の音によって変化する促音
促音/Q/とは、小さい「ッ」のこと。
直後の音が破裂音・破擦音のときは、破裂音の閉鎖が長く伸びた無音状態になる。
例)いっぱい
直後の音が摩擦音のときは、その摩擦音が長く発音される。
例)いっさい
直後の音によって変化する撥音
撥音/N/とは、しりとりで負ける「ン」のこと
直後の音が両唇音([p][m][m])のとき→/N/の条件異音は[m]
直後の音が歯茎音([t][d][ts][n][ɾ])のとき→/N/の条件異音は[n]
順行同化と逆行同化の違いとは?
順行同化の意味
順行同化とは、前の音の影響で後ろの音が変わること。
順行同化の例
・長音(カード、ニート、ムード、メード、ソード)
「ー」の音は順に/a//i//u//e//o/
・簡保(かんぽ) 保(ほ→ぽ)
前の/N/に影響されて、後ろの保/ho/が/po/になっています。
逆行同化の意味
逆行同化とは、後ろの音の影響で前の音がかわること。後ろから前なので逆行です。
逆行同化の例
・促音
・撥音
それぞれについて詳しくは上記で説明済み
音素・自由異音・条件異音が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1問2【自由異音】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題3【表記と音声】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題3【音韻交替】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3D(16)【日本語で使用できる音素の数は?】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3C(12)【自由異音の例】
・平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題3A (2)選択肢1【異音】
・平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1問2【自由変異の関係にある異音】