「これ」「それ」「あれ」を指示詞と言います。
指示詞の使い方で現場指示と文脈指示に分けることができます。
現場指示とは
現場指示とは、その現場にあるものを指し示すこと。
現場指示の例
・「この本、好きなんです」
・「その塩、とってくれませんか」
・「あそこに猫がいますよ」
文脈指示とは
文脈指示とは、話の文脈に出てきたものを指し示すこと。
文脈指示は、中級で習います。
日本人は無意識のうちに使い分けていますが使い方が難しいです。
相手がいる文脈指示のルール①【相手の話を指し示すときは「そ」を使う】
相手の話に出てきたことを指し示すときは「そ」を使います。
以下の会話では相手の話に出てきた「お店」を指し示すために「それ」を使っています。
AとBが会話しているときに「お店」は現場には存在しません。
Aの会話の中に「お店」が存在します。
これが文脈指示です。
文脈指示の「そ」の例
A:去年、日本に旅行した時に行ったお店がとてもおもしろかったです。
B:へー。それは何というお店ですか。
相手がいる文脈指示のルール②【話し手も聞き手も知っていることには「あ」を使う】
話し手も聞き手も知っていること→「あ」
話し手と聞き手で情報を共有している話題には「あ」を使います。
以下の会話のBの2つ目の発話を見てください。
知っているお店だと気づいてから「そ」→「あ」に変わっています。
日本語っておもしろいですね。
相手がいる文脈指示の「あ」の例
A:去年、日本に旅行した時に行ったお店がとてもおもしろかったです。
B:へー。それは何というお店ですか。
A:「キャットカフェX」です。
B:あー、あのお店ですか! 知っています! YouTubeで見ました! あのお店、一度行ってみたいと思っていたんです。いいなあ。
A:ええ。あのお店は本当によかったですよ。
文章の文脈指示のルール
文を書く時の文脈指示(相手がいない文脈指示)は会話とは違う以下のルールがあります。
①ア系指示詞は使わない。ソ系指示詞を使うことが多い。
②指示対象が具体的な名詞(物や人や場所)の場合は、 コ系指示詞か、ソ系指示詞を使う。
③指示対象が指示詞の後に現れる場合は、コ系指示詞を用いる。
文章の文脈指示の例
買おうかどうか迷っていた本があった。この/その(②)本はとても魅力的なタイトルをしていたので本来ならすぐ買っていただろう。でも、この/その(②)本には電子書籍がなかった。それで悩んでた。だが、買った! 今日決めた。今は仕事が山積みでなかなか読めないけれど、この本を読む日が来るのが待ち遠しい。ワクワクしている。タイトルはこれ(③)です。 『言語学バーリ・トゥード』
コ系指示詞の例
私は昨日猫カフェに行きました。この猫カフェは台湾で人気のお店の姉妹店で…
文脈指示・現場指示が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和5年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題3問5【人称と指示表現の関係】
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問1【情報が共有されている場合の言語形式】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1問2【指示詞の文脈指示用法】