コミュニカティブ・アプローチの意味
コミュニカティブ・アプローチとは、コミュニケーション能力の向上を重視した教授法。生教材を使ったり、ロールプレイをしたり、ディスカッションしたり、現実にその言語を使う場面での活動を重視します。
コミュニカティブ・アプローチは、形式より意味重視のフォーカス・オン・ミーニングです。
コミュニカティブ・アプローチはコミュニケーション能力の獲得を目的とする教授法の総称で、特定の指導方法や教室手順を指すものではありません(『日本語教育能力検定試験に合格するための教授法37』189頁)。
コミュニカティブ・アプローチの特徴
・会話の中で意味交渉が生じることによって言語習得が促進されるという考え(平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4 )
・言語形式や構造より文脈における言語の機能や意味を重視する(令和2年度 日本語教育能力検定 試験Ⅰ問題4問3)。
・概念・機能シラバスを用いる
機能シラバスの例「誘う」「依頼する」「助言する」「ほめる」(平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問5)
・タスク(課題)の達成を主眼としたタスク中心の活動
・学習者中心の活動を教師は補助
・現実のコミュニケーション場面に基づいた教材(生教材)を使用
コミュニカティブ・アプローチが重視するコミュニケーションの3要素とは?
コミュニカティブ・アプローチでは、現実のコミュニケーションと同じように、インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の要素が備わっている実践的な言語活動(教室活動)を行います。
インフォメーションギャップ【情報の格差】
インフォメーション・ギャップとは、自分は知っているけど相手は知らない。あるいは相手は知っているけど自分は知らないこと。情報差、情報の格差とも。
インフォメーションギャップの例
A:今度、ディズニーランド行かない?
B:いいね。
A:いつ、空いてる?
B:明日は?
A:あ、ごめん。明日はちょっと。バイトが…。明後日は?
B:あ、明後日はちょっとデートが…。
上の会話でAとBはお互いの予定を知りません。
このように現実のコミュニケーション場面では、対話者間にインフォメーションギャップがあります。
チョイス【選択権】
チョイスとは、自分で自分がどのように言うか決めること。選択権とも。
チョイスの例
例えば相手をディズニーランドに誘いたいときに
「私とディズニーランドに行きませんか?」
「ディズニー行かない?」
「ディズニー行かね?」
「ディズニー好き?」
「ディズニー行ったことある?」
「僕の初めての人になってくれませんか?」
など誘い方は無数にあります。
現実のコミュニケーション場面では
自分の言いたいことをどう伝えるか、どんな情報を相手に伝えるか、
発話者に選択する権利があります。
それがチョイス。
フィードバック【反応】
フィードバックとは、相手の反応に合わせて会話を進めること。反応とも。
フィードバックの例
A:(ディズニーランドに誘おうと思って)ディズニー好き?
B:いや、好きじゃない。
A:だよねー。人多すぎるし、もっと安くて楽しいところあるよねー。
上の会話のAはディズニーに誘おうと思っていましたが、Bの反応が悪かったので、誘うのをやめて、Bに合わせてました。
コミュニカティブ・アプローチの教室活動を行う際に必要とされる条件
① インフォメーションギャップ(情報格差)
②チョイス(選択権)
③フィードバック(反応)
のほかに真正性も必要です。
詳しくは下の記事をどうぞ。
コミュニカティブ・アプローチの長所と短所
コミュニカティブアプローチは、形式より意味を重視(フォーカス・オン・ミーニング)するので、意味より形式を重視する(フォーカス・オン・フォームズ)オーディオリンガルメソッドの反対です。互いの長所が互いの短所になっていると覚えましょう。教授法を学ぶのにおすすめの参考書『日本語教育能力検定試験に合格するための教授法』192頁には、オーディオリンガルメソッド(ALM)とコミュニカティブアプローチ(CLT)の対照表がありますので、比較して整理するのに便利です。
コミュニカティブアプローチの長所(メリット)
・学習者のニーズに沿って学習できる
・実践的なコミュニケーションが学べる
コミュニカティブアプローチの短所(デメリット)
・体系的な学習がしにくい
・コミュニケーション(意思疎通)できればよしとするので、正確さが向上しにくい
コミュニカティブ・アプローチが出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和2年度 日本語教育能力検定 試験Ⅰ問題4問3【コミュニカティブ・アプローチに関する記述】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問1選択肢2【コミュニカティブ・アプローチ】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問1【コミュニカティブ・アプローチの背景となる考え方】
・平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問5【コミュニカティブ・アプローチにおける重要な役割を果たしたシラバスの項目例】
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問1選択肢4【コミュニカティブ・アプローチ】
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題5問3【ロールカードを作成するとき「情報差」以外に考慮すべき2つの要素は?】【選択権、反応】
・平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問3【オーディオ・リンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチの特徴を比較】
・平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問2【コミュニカティブ・アプローチが重視するコミュニケーション過程の3つの要素】