テンスとは?
テンスとは、時間の前後関係を表す文法カテゴリーです。
「私は昨日初めて猫カフェに行った。猫はかわいかった。また明日も行く」
上の文の太字がテンスです。
現在なのか過去なのか未来なのかはテンスが教えてくれます。
テンスは、時制ともいいます。
英語の授業では時制で習った記憶があります。
相対テンスと絶対テンスの違いがわかるようになる問題
下の4つの例を見てください。
日本にいるタイ人留学生が主人公です。
例1)先月、タイに帰る時、『白い恋人』をたくさん買った。
例2)先月、タイに帰った時、『白い恋人』を国の友達にあげた。
例3)来月、タイに帰る時は、日本のウイスキーをたくさん買いたい。
例4)来月、タイに帰った時に、日本のウイスキーを国の友達と飲みたい。
この4つの例の『帰る時』と『帰った時』の使い分けを理解するのが、初級の学習者にとってはかなり難しいのです。
初級の学習者は
『タ』形=過去
というシンプルルールで考えている人が多いです。
そのため、以下のような疑問が浮かびます。
質問1「例1はどうして過去なのに「帰る時」ですか?」
質問2「例4はどうして未来なのに「帰った時」ですか?」
この学生の質問にどう答えますか?
私の答えを見る前に、みなさんも考えてみてください。
相対テンスの意味
相対テンスとは、行為の時期が他の述語の後か前かで相対的にテンスが決まること。
複文の場合、従属節は基本的に相対テンスです。主節の後か前かで相対的にテンスが決まります。主節を基準に考えます。
相対テンスの例【主節の後はル形】
※赤色ハイライトが相対テンス
例1)先月、タイに帰る時、『白い恋人』をたくさん買った。
相対テンス(従属節): 先月、タイに帰る時
絶対テンス(主節): 『白い恋人』をたくさん買った
『白い恋人』をたくさん買った(主節)の後に、タイに帰っています(従属節)。
主節の後(未来)なので、ル形を使います。
相対テンスの例【主節の前はタ形】
例2)先月、タイに帰った時、『白い恋人』を国の友達にあげた。
相対テンス(従属節):先月、タイに帰った時
絶対テンス(主節): 『白い恋人』を国の友達にあげた
『白い恋人』を国の友だちにあげる(主節)前に、タイに帰っています(従属節)。
主節の前(過去)なので、タ形を使います。
絶対テンスの意味
絶対テンスとは、他の述語と関係なく絶対的にテンスが決まること。発話時を基準に考えます。単文や主節は絶対テンスです。
絶対テンスの例【発話時の後はル形】
※青色ハイライトが絶対テンス
例3)来月、タイに帰る時は、日本のウイスキーをたくさん買いたい。
相対テンス(従属節):来月、タイに帰る時
絶対テンス(主節):日本のウイスキーをたくさん買いたい。
発話時はまだ日本のウイスキーを買っていません。
「 日本のウイスキーをたくさん買いたい」のは、発話時の後(未来)なので、ル形を使います。
なお、便宜上ル形と呼んでいますが、「買いたい」のような「~したい」はイ形容詞と活用が同じなので、イ形になります。
絶対テンスの例【発話時の前はタ形】
例1) 先月、タイに帰る時、『白い恋人』をたくさん買った。
相対テンス(従属節): 先月、タイに帰る時
絶対テンス(主節): 『白い恋人』をたくさん買った
発話時すでに『白い恋人』をたくさん買っています。
「『白い恋人』をたくさん買った」のは、発話時の前(過去)なので、タ形を使います。
相対テンスと絶対テンスに関する学生からの質問に答える
質問1「例1はどうして過去なのに「帰る時」ですか?」
例1)先月、タイに帰る時、『白い恋人』をたくさん買った。
私なら以下のように説明します。
例1にはいくつのアクション(行為)がありますか?
そうです。
2つです。
「タイに帰る」と「『白い恋人』をたくさん買った」の2つです。
「タイに帰る」と「『白い恋人』をたくさん買った」の順番は?
「『白い恋人』をたくさん買った」 → 「タイに帰る」
ですね?
「『白い恋人』をたくさん買った」の時、まだタイには帰っていません。
これから帰ります。未来です。だからル形を使います。
質問2「例4はどうして未来なのに「帰った時」ですか?」
例4)来月、タイに帰った時に、日本のウイスキーを国の友達と飲みたい。
例4にはいくつのアクション(行為)がありますか?
そうです。
2つです。
「タイに帰った」と「 日本のウイスキーを国の友達と飲む 」の2つです。
「タイに帰る」と 「 日本のウイスキーを国の友達と飲む 」 の順番は?
「タイに帰る」→ 「 日本のウイスキーを国の友だちと飲む」
ですね?
「 日本のウイスキーを国の友だちと飲む」 のとき、もうタイには帰っています。
もう帰りました。過去です。だからタ形を使います。