令和2年度(2020年)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題12【日本語の語彙】の解説です。
問1 サピア・ウォーフの仮説とは?
サピア・ウォーフの仮説とは、考え方や物事に対する見方は母語の影響を受けるという仮説。言語相対論とも。強い仮説と弱い仮説がある。
詳しくは下の記事をどうぞ
選択肢を見ていくと「思考や経験様式が言語に依存している」というのは上の定義の言い換えであることがわかります。
よって、答えは4
問2 色彩や気候に関する語彙
色彩に関する日本語と外国語の違いといえば、例えば、肌色ですね。昔は日本人の肌色がだいたい同じだったからよかったものの、アメリカで肌色と言われたって何色やねん! となります。
また、日本語は自然を表す語彙が多いと言われています。
例えば、雨でも、春雨(はるさめ)五月雨(さみだれ)、時雨(しぐれ)など、いろいろあります。
選択肢を見てみると「日本語には」と全て書いてあるので、
日本語にあって英語にないもの
を探せばいいと。
選択肢3
日本語には「兄」「弟」という語彙の違いがありますが、英語ではどちらも「brother」です。
よって、答えは3
問3 特定の語が一般化した意味で使用される例
特定の語が一般化した意味で使用される例といえば「宅急便」ですね。
これは本来、クロネコヤマトの宅配サービスを表す言葉で、ヤマト運輸の登録商標です。
しかし、佐川さんが来たとしても我々は「宅急便」という言葉をよく使います。(本来の一般的な言葉は「宅配便)
スタジオジブリさんも気づかぬまま『魔女宅急便』というタイトルをつけてしまったほど。
それでは選択肢を見ていきましょう。
選択肢1 瀬戸物
瀬戸物は本来、瀬戸地方の焼き物(陶磁器)のことを指していましたが、現在では陶磁器一般のことを指しています。
選択肢2 卵雑炊
卵雑炊は、もとから「卵が入った雑炊」のことを指す一般的な言葉です。
選択肢3 花吹雪
花吹雪は、花が乱れ散る様子を吹雪に例えたメタファー(隠喩)です。
日本語教育能力検定試験は比喩が大好きですね。
選択肢4 親子丼
親子丼は、「親」という上位概念で「卵の親」という下位概念を指しており、「子」という上位概念で「ニワトリの子」という下位概念を指しているので、シネクドキ―(提喩)です。
よって、答えは1
食べ物比喩クイズ
ところで、食べ物シリーズの比喩は試験に出るかもしれませんから、ここで唐突にクイズです。
以下の食べ物はそれぞれどのタイプの比喩でしょうか? 答えはこのブログの最後にあります。
- 月見うどん
- たこ焼き
- たい焼き
- 焼き鳥
問4 「忌み言葉」を言い換えた表現の例
忌み言葉とは、不吉なので特定の場面で使用を避ける言葉です。
選択肢の場面を考えて、本来は別の言葉を使用しそうだがそれを避けているものを考えると…
選択肢3
これは、結婚式のスピーチの締めの言葉です。
本来、スピーチの最後は、「以上で、~を終わります」とか「最後に~」とかですが、「終わります」とか「最後」などの言葉は、結婚式というこれから新しい生活が始まる場面ではふさわしくないので、「結び」という言葉に言い換えています。
よって、答えは3
問5 語種の組み合わせが異なる混種語
和語とは、日本で生まれた言葉
漢語とは、中国からきた言葉
外来語とは、外国からきた言葉。主に西欧語
混種語ととは、和語、漢語、外来語が混じった言葉
これらを語種といいます。
平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3B【対義語】では、「語種」という言葉が出てきていますので、一緒にチェックしておきましょう。
各選択肢を見ていきます。
- 中華(漢語)+ソバ(和語)
- 窓(和語)+ガラス(外来語)
- 長(和語)+ズボン(外来語)
- 生(和語)+ビール(外来語)
よって、答えは1
過去問を解説しているYouTubeライブを見る
食べ物比喩クイズの答え
- 月見うどんは、卵を形が似ている月に例えているのでメタファー(隠喩)
- たこ焼きは、「たこが入っている粉もん」のことを単に「たこ」と言っているので、メトニミー(換喩)
- たい焼きは、形が似ている「たい」に例えているのでメタファー(隠喩)
- 焼き鳥は、「鳥」全般じゃなくて「ニワトリ」という下位概念を指しているので、シネクドキ―(提喩)