問1の正答率は44.7パーセント
問1の解き方【アメリカ構造主義言語学】
構造主義言語学については平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9でも触れられていましたね。
構造とは、全体を形づくっている種々の材料による各部分の組み合わせ。作りや仕組み。各要素の相互関係(大辞林より)。つまり構造主義言語学とは、各パーツの組み合わせから言語を考える学問です。
平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9の解説より
この過去問解説を理解していた方はできたでしょう。
「各パーツの組み合わせ」と一番近いのは
選択肢3「音声を最小単位まで分析し、体系化」
実は下線部Aの次の文にもヒントがあります。
「その一つである〜音声指導の方法として、ミニマルペア練習があり」
ミニマルペアとは、音声の最小単位を分析するためのペア
選択肢3「音声を最小単位まで分析し」
よって、答えは3
各選択肢も検討しておきます。
1 人間には様々な認知的機能と同様に言語を獲得する機能が備わっていると考える。
「言語獲得機能」といえば、チョムスキーさんの生成文法です。
2 言語は、知覚、カテゴリー化、記憶などの認知能力に動機づけられて成立していると考える。
言葉の問題を言語だけに狭く閉じ込めないで、事柄に対するわれわれの見方や態度と結びつけて考えていこうというのが、認知言語学の特徴なんですね。
「言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語」位置No.167より
言語と認知能力を結び付けるのは認知言語学ですね。
4 言語を歴史的に比較することによって、言語の系統関係を明らかにする。
比較言語学です。日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版p165参照
本問を理解するのにおすすめの本
「雨に降られた」は自然なのに「財布に落ちられた」「おならに出られた」はどうして不自然なのか?
学習者からも質問がありそうな素朴な疑問から出発しているのでとても読みやすい認知言語学の本です。
認知言語学だけでなく、言語学発展の歴史を知ることができます。
ソシュールの構造主義言語学、アメリカ構造主義言語学、スキナーの行動主義心理学、チョムスキーの生成文法…。
本問を理解するのに役立つ本であり、間接受身など学習者からの質問にも役立つ本です。
しかも対話形式で読みやすい。
最高ですね。
問2の正答率は、69.1パーセント
問2の解き方【ミニマルペア】
ミニマルペアとは、音声の最小単位を分析するためのペア。
1つの音以外同じ音で、意味が違うペア。
例えば、髪(kami)とカニ(kani)
「m」「n」という1つだけ音が異なり、意味が違います。
日本語では「m」と「n」は意味が区別される音の最小単位(音素)だとわかります。
選択肢から①1つだけ音が異なり②意味が違うペアを探します。
ローマ字で書いてみるとわかりやすいです。
1「個体」と「広大」
kotai
koodai
違いは一か所ではありません。
2「悪い」と「わりー」
意味が同じです。
3「行ったの」と「行かなかったよ」
ローマ字にするまでもなく、全然音が違います。
4「知らない」と「死なない」
shiranai
shinanai
/r/と/n/
1か所だけ違って意味も異なります。
よって、答えは4
ミニマル・ペアが登場した日本語教育能力検定試験の過去問
・平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問1選択肢4【ミニマルペア練習】
・平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問2選択肢2【最小対(minimal pair)】
問3の正答率は71.9パーセント
問3の解き方【VT法】
VT法とは、正しい発音の感覚を身体で覚える方法です。
具体的なやり方は令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅱ問題4の3番問1の音声を聞いてみてください。
選択肢の中から身体を使って正しい発音を身に着けさせようとしているものを選びます。
選択肢1
「身ぶりを付けながら」…「発音させる」
よって、答えは1
わらべ歌を使ったVT法
VT法(ヴェルヴォトナル法/ベルボトナル法)が登場した日本語教育能力検定試験の過去問
・平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問2選択肢4【VT法】
問4の正答率は90.3パーセント
問4の解き方【日本語の音韻の特徴】
各選択肢の例を具体的に考えてみます。
選択肢1
行こう/ikou/→行こー/ikoo/
母音連続が長音化しています 〇
選択肢2
日本語は閉音節(へいおんせつ)ではなく開音節(かいおんせつ)が中心です
類似の選択肢が平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3D(20) 選択肢3にありますので見ておいてください。
閉音節とは、子音で終わる音節
例)多くの英単語(startなど)
開音節とは、母音で終わる音節
例)多くの日本語の単語(猫/neko/など)
選択肢3
拗音は「きゃ」のように2文字で表しますが「1拍」です。
拍の数え方が心配な人は下の動画で問題にチャレンジしてください。
選択肢4
広母音とは、舌と上あごが最も離れている母音。口の中が広い母音。舌の位置から低母音とも。
広母音の読み方は「ひろぼいん」あるいは「こうぼいん」
ただし「こうぼいん」と読むと「高母音」と混同される可能性があるので「ひろぼいん」がおすすめ。
広母音は、令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3A(4)でも登場していますので見ておいてください。
母音の種類を確認したいときは、東外大言語モジュールをおすすめしています。母音の一覧だけでなく、実際の発音も聞くことができます。
黄色ハイライトが日本語の母音です。
広母音は、あ[a]のみです。
よって、答えは1
閉音節・開音節が登場した日本語教育能力検定試験の過去問
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3D(20)【日本語内部における変化の例は?】→選択肢3【閉音節構造の単語が使用されるようになった×】
・平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3A(2)選択肢4【閉音節】
問5の正答率は68.2パーセント
問5の解き方【自己モニターを利用した音声教育】
モニター(モニタリング)という言葉は日本語教育能力検定試験でよく登場しますの意味を理解して解いてください。
モニターがよくわからなかった方は下の記事をどうぞ
自己とは、自分自身
モニターとは、観察すること
つまり自己モニターとは、自分自身を観察すること
選択肢1
「自身の発音のどこが問題か認識」するには自分自身を観察する必要があります。
選択肢2
学習者に「教師自身が持つ発音基準を記憶させる」のは、自分自身を観察することと関係ありません。
選択肢3
「発音を自己修正」するには自分自身を観察する必要があります。
選択肢4
「独自の発音基準を模索」するには自分自身を観察する必要があります。
よって、答えは2
ハマが問題を解くポイントを解説した動画を見る。
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