問1の正答率は55.8
問1の解き方【語の借用】
借用語とは、他の言語より借り入れ、自国語と同様に日常的に使われるようになった語(スーパー大辞林3.0)
選択肢1
英語の「make」は動詞ですが、日本語の「メイク」は名詞のように使います。
・メイクに1時間かかる。
下記参考文献のとおり一般的には原語の品詞を保とうとする傾向があるので「関係なく決まる」というのは言い過ぎな気もしますが、他の選択肢が明らかに不適当なので、消去法でこれが正解かと。
選択肢2
形態素とは、意味を担う最小の単位でそれ以上分けられないもの。
形態素レベルでも語の借用は起こります。
例えば、「animation(アニメーション)」という語から意味を担う最小単位である形態素「anime」を抜き出し借用したのが日本語の「アニメ」です。
「アニメ」は英語に再借用されました。
日本形式の「アニメ」のことを英語でも「anime」というようになりました。
語の一部を借用している例は他に平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問2で「リストラ」「ロケバス」「パトカー」「デジカメ」なども登場しています。
選択肢3
昔の日本にとって中国は先進国であり、中国の言葉は威信の高い言語であったといえますが、中国からたくさんの言葉を日本は借用しました。
明治時代の学生は「アルバイト」のようにドイツ語から借用した言葉を使っていました。ドイツ語は当時の日本にとって威信の高い言語だったでしょう。
選択肢4
運動選手のことを最近は「アスリート」と言うようになるなど、同一概念を表す語が既に存在する場合にも起こります。
よって、答えは1
語の借用に関する参考文献
英語がカタカナ語として日本語に借入される時,概してその原語の品詞を保とうとする傾向がある。例えば英語名詞は名詞として日本語語彙範疇化され,英語形容詞は形容詞として日本語語彙範疇化される。
カタカナ語における英語品詞と日本語品詞との関連性について
問2の正答率は52.1
問2の解き方【翻訳借用】
翻訳借用とは、意味を元に外国語から訳して取り入れること
音訳借用とは、音を元に外国語から訳して取り入れること
選択肢1
訓読みから音読みに変化したもの
「返事(かえりごと)」→「返事(へんじ)」
「出張(でばり)」→「出張(しゅっちょう)」
「見物(みもの)」→「見物(けんぶつ)」
「大根(おおね)」→「大根(だいこん)
「火事(ひのこと)」→「火事(かじ)」
「心配(こころくばり)」→「心配(しんぱい)」
以上のように中国にはなかった組み合わせで訓読みしていたものが音読みに変化したものを和製漢語といいます。
選択肢2
clubを「倶楽部」、jokeを「冗句」のように音を元に外国語から訳して取り入れることを音訳借用といいます。
選択肢3
spoonを「さじ」、deskを「机」とするように新しい概念に既存語を当てるのは「他の言語より借りいれ」ているわけではないので借用とはいえません。
選択肢4
air:空
port : 港
air+port=空港
key : 鍵
board:盤
key+board=鍵盤
上記のように原語の意味を元に外国語から訳して取り入れることを翻訳借用といいます。
よって、答えは4
今後出そうな言葉【レトロニム】
レトロニムとは、「(回らない)寿司」「(第一次)世界大戦」のようにもともとある語に対して、新たに誕生した同種の語(「回転寿司」「第二次世界大戦」)と区別するために使われるようになった表現・用語のこと。
問3の正答率は50.2
問3の解き方【意味の縮小】
縮小とは、ものの大きさや規模を小さくしてちぢめること(スーパー大辞林3.0)
意味が対象が拡大しているのか(増えているのか)、縮小しているのか(減っているのか)検討します。
選択肢1
「芝の生えている所」と「演劇・演技」は意味が全然違います。
言葉が表すものが変化しただけで意味は縮小してはいません。
選択肢2
「天皇、仕える主人」と「同輩以下に対する代名詞」は意味が全然違います。
言葉が表すものが変化しただけで意味は縮小してはいません。
このように敬意が低減した人称詞について令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題14問2で登場していますので見ておいてください。
なお、「天皇、あるいは仕える主人」は特定の1人しかいませんが
「同輩以下」は不特定多数いますので
意味が拡大しているともいえます。
選択肢3
「禅寺の問」と「家屋の入り口」は意味が全然違います。
言葉が表すものが変化しただけで意味は縮小してはいません。
選択肢4
「車輪の付いた乗り物」は「自動車」「一輪車」「二輪車」「三輪車」「人力車」「馬車」などいろいろありますが
「自動車」は「車輪の付いた乗り物」のうちの1つでしかありません。
意味が縮小しています。
よって、答えは4
問4の正答率66.8
問4の解き方【「外来語」言い換え提案】
国立国語研究所が平成18年(2006年)に作成した「『外来語』言い換え提案」に関する問題です。
選択肢1
「『外来語』言い換え提案」は、使用頻度は高いが適切に言い換えられる語がない外来語について翻訳語の作り方を示しているのではありません。
「『外来語』言い換え提案」という名前のとおり、分かりにくい外来語を言い換えたり説明を付けたりするなど、具体的な言葉遣いの工夫を検討して提案しています(「外来語」言い換え提案の前書き参照)。
選択肢2
一般の人々にとって分かりにくい外来語が,公共性の高い媒体で無造作に使われ,人々の伝え合いに障害を引き起こしています。この問題を解消するため, 国立国語研究所では,平成14 年 8 月に「外来語」委員会を設置し,分かりにくい外来語を言い換えたり説明を付けたりするなど,具体的な言葉遣いの工夫を検討して提案してきました。
「外来語」言い換え提案の前書き
選択肢3
上記前書きのとおり、「理解度の低い外来語の使用を減少させるため」ではありません。
選択肢4
上記前書きのとおり、「公的機関での難解な外来語使用を制限するため」ではありません。
よって、答えは2
問5の正答率は51.6
問5の解き方【原語との音韻的違い】
選択肢1
英語のstrikeの発音は/straɪk/です。
日本語のストライクの発音は/sutoraiku/です。
日本語のモーラ規則(子音は母音とセットで使う)に組み込まれる形で母音が挿入されています。
選択肢2
多くの外来語は語末から3拍目にアクセント核が来ます。英語の強弱アクセントのパターンによって決定されるわけではありません。
選択肢3
英語のloose の発音は/lúːs/ですが、日本語ではルーズになります。
このように原音を日本語化する際に、語によっては音の一部が有声音化します。
選択肢4
whiteが「ワイシャツ」「ホワイトカラー」
glassが「グラス」「ガラス」
となるように、語によっては異なる形になります。
よって、答えは2