令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題7の正答率
問1の解き方【自己研修型教師の養成で重要なもの】
「自己研修型教師」といえば
平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題15の
「ティーチング・ポートフォリオ」の作成などを通して、自ら成長していくことのできる教師像が求められるようになってきた平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題15を思い出しますね。
持っている方はぜひ見てみてください。
ティーチング・ポートフォリオは、教育実践の内省記述と、その記述を裏付ける資料で構成されます(平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題15問5選択肢1より)
重要なのは内省です。
よって、答えは2
内省とは、自分自身の心のはたらきや状態をかえりみること(スーパー大辞林3.0より)。
内省の読み方は「ないせい」
自己研修型については
でも問われていますので見ておいてください。
問2の解き方【アクションリサーチ】
アクション・リサーチとは、教師が自らの授業を分析し、改善策を実行し(アクション)、その行動によって起きる学習者の学習状況の変化を観察・内省・報告する(リサーチ)という現場密着型の実践研究です。
アクション・リサーチは…「現職教師が自己成長を目指して行う自分サイズの調査研究」です。つまり「教師が自己成長のために自ら行動(action)を計画して実施し、その行動の結果を観察して、その結果に基づいて内省(re-flection)するリサーチ」ということになります。
(中略)
ARは自分の教授活動の中での問題点や関心事(concerns)をトピックとして、そのトピックの何が気に合っているのかをできるだけ具体的に明らかにするところから始まります。
(中略)
ARを実際に行うのは、実際に授業を担当している教師本人です。他の人の助けを得たとしても、その主体はあくまで教師自身でなければなりません。いわゆる研究者がAR実践者を援助する際は、一方的に指導したり講評したりすることは避けなければなりません。
横溝紳一郎「アクション・リサーチー日本語教師の自己成長のためにー」より
よって、答えは1
アクション・リサーチについては平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題7問2でも問われていますのでお持ちの方は見ておいてください。
アクション・リサーチについて詳しく知りたい方は
横溝紳一郎「アクション・リサーチー日本語教師の自己成長のためにー」をどうぞ。
本もあります。
問3の解き方【教師自身のビリーフ】
ビリーフとは、教師の経験に基づく価値観から形成されるものです。
よく言えば信念、悪い言えば思い込み。
Twitterでは「みん日駆逐派」と「みん日容認派」と「みん日大好き派」の争いが日々繰り広げられていますが、あれがまさにビリーフ大戦争ですね。
よって、答えは2
ビリーフが登場した日本語教育能力検定試験の過去問
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問3【学習者のビリーフ】
・令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題10問4【ビリーフ】
・平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題10問3【学習者のビリーフ】
・平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題8問4【ビリーフ】
・平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題6問1【ビリーフ】
問4の解き方【教科書分析】
この問題は教師経験があるかどうかで正答率が大きく変わりそうです。
選択肢2を選んだ人も多かったですが
ヒントは下線部Cの前
「教科書を使用する場合」
日本語教師経験者であれば、教科書を使用する場合、副教材やウェブサイトの充実度など関連教材もチェックするのは当然なので2は適当と考えます。
一方で2を不適当と考えた人は、教科書そのものではないから「教科書分析」には当たらないと判断したようです。
ですが選択肢4が明らかに違います。
「提出文型を確認するために」「登場人物の関係を確認」する意味が分かりません。
「提出文型」とは、そこで登場する文型のこと。
文型とは「〜に〇〇があります」「〜てください」「〜てくれます」のようなもの。
敬語などの待遇表現であれば、登場人物の関係も気になりますが。
登場人物の関係を確認しても提出文型はわかりません。
例えば「AとBが兄弟」であることが分かっても、そこで「〜に〇〇があります」が登場するのかあるいは他の文型が扱われるのかわかりません。
よって、答えは4
問5の解き方【授業や教え方の改善】
3が明らかに変なので落としたくない問題です。
できなかった人は「肯定証拠」の意味がわからなかったかと。
肯定証拠と否定証拠というキーワードは日本語教育能力検定試験によく登場しますので下の記事を見て理解しておいてください。
選択肢3 授業の問題点に関する肯定証拠の事例を集め、授業を実践する。
自分の授業の問題点が例えば「教師が話し過ぎる」だとします。
肯定証拠とは、それが正しいことの証拠です。
つまり、「授業の問題点に関する肯定証拠の事例を集め」とは
「教師が話し過ぎる」ことは「正しい」としている事例を集めることです。
「教師が話し過ぎる」ことが正しい事例はたくさんある!
だから自分は悪くない!
この授業を実践する!
全く反省していません。
自らのビリーフに執着した悪い例です。
よって、答えは3