問1の解き方【社会的アイデンティティの形成に関わっているもの】
社会的アイデンティティ?
分からない言葉は分解します。
社会とは何ですか? アイデンティティとは何ですか?
社会とは、人々のまとまりとその関係
アイデンティティとは、自分をどのように認識しているか。日本語でアイデンティティは同一性。同一性とはずっと同じであり続けること。
例えば、自分は女だと思っていたのに、寝て起きたら男になっていました。
例えば、自分は日本人だと思っていたのに、寝て起きたらアメリカ人になっていました。
どう思いますか?
ショックですね。
どんなショックですか?
それはアイデンティティが揺らぐショックです。
アイデンティティとは同じであり続けること。
毎日性別が変わっていたら、毎日国籍が変わっていたら、自分がどういう人間なのか分からなくなります。
私は女なのか男なのか。日本人なのかアメリカ人なのか。
ありがたいことに私は、自分は男であると確信しています。変わりません。生まれてから今までずっと自分は男であり、日本人であると認識し続けています。
これがアイデンティティです。
性別に関するアイデンティティが揺らぎがちなのがLGBTの方々であり、
国籍・文化に関するアイデンティティが揺らぎがちなのがミックス(ハーフ)や帰国子女の方々です。
本問では社会的アイデンティティを問われています。
社会は人々のまとまり。
つまり
社会的アイデンティティとは、まとまり(グループ)に関するアイデンティティです。自分が所属しているグループから自分が何者なのか判断します。
社会、まとまりの反対は何ですか?
個人、個別です。
社会的アイデンティティの反対は個人的アイデンティティです。
個人的アイデンティティとは、属するグループに関係なく個人の特性・特徴・能力から自分が何者なのか判断します。
選択肢1
心理的特性は個人によってみんな違うので、個人的アイデンティティです。
選択肢2
身体的特徴は個人によってみんな違うので、個人的アイデンティティです。
選択肢3
性や国籍は、同グループに属する人はみんな同じなので、社会的アイデンティティです。
選択肢4
能力は個人によってみんな違うので、個人的アイデンティティです。
よって、答えは3
問2の解き方【日本国外における日本語の継承教育の変遷】
時事問題ですね。
時事問題は範囲が膨大過ぎるのでJFの海外日本語教育機関調査など確実に出てくるもの以外はあまりやらなくていいというのが私の考えです。
時事問題は勉強の費用対効果が悪いです。
日本語教師になってからも直接的にはあまり役に立ちませんし。
本問は「日本語の継承語教育」に関する知識がなくても解けます。
変な選択肢が答えです。
選択肢1
今でも「日本語教育の専門家」がプログラムを運営しています。
JFが日本語教育の専門家を海外に派遣しているのは過去にも出題されていますし、大事な求人情報なので覚えておきましょう。
変な選択肢なのでこれが答え
選択肢2から選択肢4はそのとおりなのでこのまま覚えてください。
よって、答えは1
問3の解き方【会話的コード・スイッチングの例】
コード・スイッチングは平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12の問題文の文章に詳しい説明がありますので読んでおいてください。
二言語話者(バイリンガル)が言語を切り替えることをコード・スイッチングといいます。
コード・スイッチングの種類やスピーチレベル(スタイルシフト)との違いが知りたい人はこちら
選択肢1
「引用する」のは会話的コード・スイッチングです。
選択肢2
「日常生活」と「宗教上の儀式」という場面で言語を使い分けているので、状況的コード・スイッチングです。
選択肢3
「相手」に会わせるのは状況的コード・スイッチングです。
選択肢4
「親に分からないように」
つまり親を疎外し、二人は親密になる。
隠喩的コード・スイッチングです。
よって、答えは1
問4の解き方【日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語で最も多い言語は?】
日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)のことを知っていれば、 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語で最も多い言語はポルトガル語だと分かります。
では、知らなかったときはどうやって答えにたどり着くか?
留学生の国籍で一番多いのは中国だ。
答えは中国? いや、留学生が子連れで来ることは少ない。
子どもがたくさんいるのは留学生ではなく、日本で働いている外国人だろう。
日本で働いている外国人はバブルの時にたくさん来た日系ブラジル人では?
愛知の自動車関連でたくさん働いていると聞いたことがある。
よって、答えは4
日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版はp428
問5の解き方【成人の日本語学習者に対するアイデンティティへの配慮】
この問題は知識が無くても解けます。落としたくない問題です。
選択肢1
「アイデンティティに影響を与えないように配慮する」ってどうすればいいのでしょう?
「あなたはアメリカ人だからどれだけ日本語を勉強しても決して日本人はなれないし日本文化になじむこともできない。ずっとガイジンのままなのよ」と言えばいいのでしょうか。
明らかにダメです。
バツ
選択肢2
選択肢1と2は両極端です。
選択肢1:お前はガイジンだ! 日本人とは絶対違う!
選択肢2:お前は日本に住んでいるんだから日本に合わせなければならない! 日本人になれ!
どちらもだめです。
バツ
選択肢3
例えば、日本人がはっきり言わないことに違和感を持つ外国人学習者がいます。
そのまま放置しておくと「日本はおかしい! 日本は変だ! 日本はダメだ! 日本は遅れている!」とダークサイドに落ちてしまうかもしれません。
日本語学習の初期段階で配慮して、日本と学習者の文化の違いを理解してもらう必要があります。
マル
選択肢4
「日本の文化や価値観を切り離して日本語を指導する」ってどうすればいいのでしょうか?
日本語は日本文化をベースに育ってきたので、そこを切り離すことはできません。
例えば、英語には「brother」しかないのに、日本語には「兄」「弟」があります。日本は地位の上下が重要なタテ社会だからじゃないでしょうか(詳しくは中根千枝著『タテ社会の人間関係』参照)。
このように文化と言語は密接に関係しているので切り離すことはできません。
よって、答えは3