問1の解き方
文脈指示の問題です。文脈指示は日本語教師に必須の知識です。
文脈指示について詳しくはこちら
また、そもそもこの問題は知識がなくても解けます。
「情報が共有されている場合」なのだから
「発話者も相手も知っていることかどうか」
各選択肢を検討すれば解けます。
落としたくない問題です。
選択肢1
「あの会議、品川だったよね?」
「あの」は情報が共有されている場合の言語形式でしょうか?
この発言の相手は「あの会議」のことを知っていますか? 知っていませんか?
知っています。
話し手も聞き手も知っていることにはア系指示詞(あれ、あの、あそこ、あちら…)を使います。
話し手も聞き手も知っているということは情報が共有されているということです。
マル
選択肢2
「私、来週また主張なんだ」
「私」は情報が共有されている場合の言語形式でしょうか?
明らかに違います。
初めて会った何の情報も共有されていない相手に対しても
「はじめまして。私の名前はハマです。よろしくお願いします」と言います。
「私」は情報が共有されていない場合でも使えます。
バツ
選択肢3
「ああ、すっかり秋だな」
「な」は情報が共有されている場合の言語形式でしょうか?
明らかに違います。
「疲れたな…」
自分が疲れていることを相手と共有していなくても(相手が知らなくても)、「な」を使うことができます。
この「な」は深く感じた時に使う「な」です。
バツ
選択肢4
「お花見、誰と行ったの?」
「の」は情報が共有されている場合の言語形式でしょうか?
明らかに違います。
「お花見、行ったの?」
情報が共有されていないから、知らないから使っています。
バツ
よって、答えは1
問2の解き方
この問題はできなくても気にしないでください。
私は3を選びました。みなさんはどうですか?
解答速報では3校が3、2校が2です。
①本来の聞き手はだれ?
②話し方を変えたのはどうして?
この2点を検討します。
選択肢1
①本来の聞き手は、「住民」です。
②方言を使ったのは「住民」にリラックスしてもらうためです。
本来の聞き手のために話し方を変えています。
バツ
選択肢2
①本来の聞き手は「地元の聴衆」です。
②地域方言で答えたのは、「地元の聴衆」のためです。
本来の聞き手のために話し方を変えています。
バツ
にしたのですが、公式の答えはマルでした。
①本来の聞き手「インタビュアー」
という理解なのでしょう。
ですが、どうでしょうか。
これは「本来」の解釈の問題です。
私は、地方選挙のインタビューなので、「本来」の聞き手は、有権者である「地元の聴衆」だと考えました。
みなさんはどうですか?
選択肢3
①「小学校の運動会の開会式」をイメージしてください。「校長先生」は誰に向かって話をしますか? 小学生ですね。小学校の運動会をするのは「保護者と地域住民」ではなく「児童」です。本来の聞き手は「児童」です。
②改まった口調で挨拶したのは「保護者と地域住民」のためです。
本来の聞き手以外の参加者の存在によって話し方を変えています。
マル
としたのですが、公式の答えはバツでした。
①校長が「改まった口調で挨拶をする」相手は「保護者と地域住民」です。なので、聞き手は「保護者と地域住民」です。
「本来」が無ければ迷わないのですが、「本来」とあるため、小学校の運動会なのだから本来の聞き手は「児童」だろうと考えました。
ですが、いま考え直したら確かに、小学生児童に対しては「改まった口調で挨拶」はしないでしょうから、「改まった口調」の挨拶の聞き手は「保護者と地域住民」と考えるべきでしょうか。
ただ、実際に校長がどのような発言をしているのかがわからないので断言はしづらい。
選択肢4
本来の聞き手のために話し方を変えています。
バツ
よって、答えは3
よって、答えは2
問3の解き方
知識なしで解けます。落としたくない問題です。
「他と用法の異なるもの」を探す問題は、別の言葉で言い換えてください。
選択肢1
予報が変わって、晴れるそうです。
「って」=「と言ってた」
伝聞です。
選択肢2
お腹が痛いから、先に帰るそうです。
「って」=「と言ってた」
伝聞です
選択肢3
ないよ、ないと言ってるでしょ。
「って」=「と言ってるでしょ」
伝聞ではありません。自分の言葉です。
選択肢4
来月じゃなくて、再来月に来るんだそうです。
「って」=「と言ってた」
伝聞です。
よって、答えは3
問4の解き方
日本語教育能力検定試験は「隣接応答ペア」「非優先応答」が本当に大好きですね。
「隣接応答ペア」は過去に何度も何度も出てきているので確実に取りたい問題です。
できなかった人はこちらで勉強してください。
特に平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問2はそっくりなので要チェックです。
非優先応答なので、聞きたくなかった応答を選びます。
選択肢1
問いー返答
「猫は好きですか?」「はい、好きです」
優先応答です。
選択肢2
申し出ー受諾
「持ちましょうか」「ありがとうございます」
優先応答です。
選択肢3
「ハンバーガーにピクルスが入ってなかったんですけど」「あー、新人が作ったんで忘れたんだと思います」
苦情を言う人は弁明を聞きたいわけではないので非優先応答です。
選択肢4
要請ー許可
「貸してくれませんか」「いいですよ」
よって、答えは3
問5の解き方
知識なしで解ける落としたくない問題です。
変な選択肢を切れば答えが出ます。
選択肢1
インタビューであれば説明は不要ですが、ロールプレイなどはタスクの説明が必要になります。
「あなたはディズニーランドのチケットを2枚持っています。クラスメイトと一緒に行きたいです。誘ってください」などと最初にタスクの場面の説明をします。
もしタスクの説明をせずにいきなり、私が誘われたいクラスメイト役になって。
「あ、ディズニーランドのチケットを持っているんですね」とか話を始めても、その後どのように会話が進んでいくのか想像がつかず、評価方法を事前に設定することができません。
バツ
選択肢2
テストによっては評価方法を伝えない場合もあると思います。
事前にテスト対策をさせず、本当の口頭レベルを測るためです。
「学習者の緊張感や不安感を高めないように」ではありません。
バツ
選択肢3
ロールプレイには選択権(チョイス)があります(日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版p247参照)。
言うべきことは相手が決めるため、モデル会話通りに進行しない場合もあります。
モデル会話通りを評価するのはロールプレイではなく、モデル会話の暗記テストでしょう。
バツ
選択肢4
そのとおりです。
よって、答えは4
授業で役立つ豆知識
学習者「『って』は何ですか?」
日本語教師がよく聞かれる質問です。
日本語のカジュアル会話は「って」をよく使います。
「って」には色々な意味・用法があります。
皆さんはいくつ思い浮かびますか?
この下に私の例がありますが、見る前に考えてみてください。
…
…
…
①先生が明日は休みと言っていました→先生が明日は休みって言っていました。
②鬼滅の刃というマンガ→鬼滅の刃ってマンガ
③先生はどんな人ですか?→先生ってどんな人ですか?
「と」「という」「は」は話すとき「って」になりがちです。
同じ「って」でも元の形は違いますので、授業で「って」が出てきたら、この「って」はどんな意味か、どんな言葉に変えることができるか学習者に確認してみるといいでしょう。