平成30年度(2018)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題2(4)の誤用は【今日の朝食はたいてい8割くらい残しました。】です。
解き方
例がどんな誤用か考える
「たいてい」をどう直せばいいかな? 後ろの名詞を見ると「8割ぐらい」とある。割合だ。割合と一緒に使えそうな言葉…。あ、「だいたい」はどうだろう? 「だいたい8割ぐらい」、オッケー!
選択肢から同じ誤用を探す
各選択肢の「たいてい」を「だいたい」に変えてみよう。
- だいたい1時間 〇
- だいたい全員 〇
- ゴミ出しをだいたい忘れてしまうことがよくあります。 ×
- だいたい何グラム まる
3だけ変。答えは3!
3の問題点は「だいたい」「よく」という頻度を表す副詞を2つも使っていることです。
例)私はいつもよくだいたいたまに猫カフェに行きます。×
日本語レッスンで役立つ豆知識:「たいてい」と「だいたい」の違いとは?
「たいてい」という言葉は「いつも」「よく」「ときどき」「たまに」と同じように頻度・確率を表します。
頻度とは、それをどのぐらいよくするか。
「だいたい」という言葉は「全部」「ほとんど」「すこし」と同じように数量・割合を表します。
問題でいえば
1,2,4は数量・割合なので「だいたい」
3は頻度なので「たいてい」
という説明で終わることが多いのですが、実はそんな簡単な問題ではないのが「たいてい」と「だいたい」の関係です。
「たいてい」と「だいたい」の違いは外国人にはかなり難しいです。国語辞典で「たいてい」の意味を調べると「だいたい」と書いてあったりします。そう。同じように使うときもあるんですね。
ホワイジャパニーズピーポー!
iPhoneアプリの大辞林で「たいてい」の例文を調べると
「問題はたいていできた」
とありますが、
「問題はだいたいてきた」
これもオッケーですよね? むしろ「だいたい」と私なら言うかな。最近は「だいたい」を使う人が増えているようです。
しかし、どちらかしか使えない場面もあります。
「だいたい」しか使えない場面
だいたいとは、1つに対して使う言葉
例)仕事はだいたい終わった。
仕事が1つだとしたら、それがほとんど終わった場合「だいたい終わった」と言いますよね?
「たいてい」しか使えない場面
たいていとは、複数に対して使う言葉
例)日曜日はたいてい家にいます。
これは毎週の日曜日ということで複数ですね。
例)日曜日はだいたい家にいます。
1日という1つの日曜日のほとんどは家で過ごすという意味に感じます。
前述の例でも、
「問題はだいたいできた」はテストは1つ
「問題はたいていできた」は複数の問題
として捉えているのではないかと。
例)仕事はたいてい終わった。
というと複数の仕事があるように感じませんか?
ところが最近は「たいてい」の領域を「だいたい」が侵食しているため事態はさらにややこしくなります。
・チャレンジはたいてい失敗する。
・チャレンジはだいたい失敗する。
どうでしょうか? ここでいう「チャレンジ」は複数ありそうですが「だいたい失敗する」でも違和感がないのは私だけですか?
最近の感覚で言うと
「たいてい」→「だいたい」の変換は違和感がなかったりするけれど、
「だいだい」→「たいてい」は違和感を感じることが多いので、
「迷ったらだいたいを使ってください」
と私なら学習者に言っちゃうかも。
「だいたいの本」
「たいていの本」