H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰの問題7【自律学習とは何か】の解説です。
自律学習(学習者オートノミー)は、最近の日本語教育のキーワードです。
日本語教育能力検定試験でも頻出ですから問題7の文章を読み込んでしっかり理解しておきましょう。
平成29年度日本語教育能力検定試験が考える自律学習とは何か?
2行目に書いてありますので要チェックです。
自律学習 (学習者オートノミー) とは、「学習者が自分自身の学習全体に責任を持つ学習方法」のこと。
問1の解き方【自律学習をねらいとした教師の行動】
各選択肢を見ていきましょう。
選択肢1
ひっかけ問題です。
自習=自律学習ではありません!
どうして自立=自律学習じゃないと思いますか?
ちょっと考えてみてください。
選択肢2
教師が「教える」のは、一方的に与えるものです。
学習者が「自分の行動を自分の立てた規律に従って」ではないです。
自律学習ではありません。
選択肢3
学習日記とは、毎日の学習の記録を付けたもの。学習内容、使った参考書、勉強時間など。
学習日記をつけることで、毎日の自分の学習内容を把握できます。
把握すれば、明日の勉強や来週の勉強の計画も立てることができます。
自分の立てた規律に従って自分の行動をすることができます。
よって、自律学習をねらいとして学習日記をつけさせることは効果的です。
選択肢4
アチーブメント・テストとは、到達度テスト。学習した内容に関して問われるテスト。勉強したことをどれだけ理解しているかを確認する。学校で行われる小テストや期末試験。
アチーブメント・テストなるカタカナに騙されてはいけません。
要は今まで通りの学校です。
教師が作成した小テストや期末試験を受けさせることは、言われてことをやっているだけです。
教師が一方的に与えるものです。
「自分の立てた規律に従って」自分の行動をするわけではありません。
以上より、答えは3です
自習が自律学習ではない理由
自習=自律学習
ではありません。
「自」という漢字の共通点に騙されないでください。
確かに、自習もやり方によっては自律学習になります。
例えば
全く学校に行かずに、家で自分の立てた計画に従って勉強をする。
これは、「自分の立てた規律に従って」自分の行動をしているので
自律学習と言える自習です。
ですが、
「今日は先生がいないので、自習です。教科書の80ページの問題を解いてください。終わった人はプリントをやってください」
これは自律学習ではありません。
「自分の立てた規律」
ではなく
「学校から与えられた課題」
ですから。
問2の解き方【自律学習における教師の役割】
ファシリテーターが思い浮かびますが、
選択肢にありません。
これが検定試験のやり口です。
カタカナばっかり!
ちょっと嫌になっちゃいますが
知っている言葉から推測していけば
消去法で解けるでしょうか。
選択肢を見ていきましょう。
カウンセラーとは?
カウンセラーはわかりやすいです。
カウンセラーとは、悩みがある人の相談に応じ、アドバイスをする人。
ポイントは、受身であるということ。
あくまで、相談者のサポート役
カウンセラーが率先して何かをするわけではありません。
逆に言うと、学習者が主役
決めるのは学習者
そのサポートをカウンセラーたる教師が行います。
自律学習に適当です。
インストラクターとは?
インストラクターといえば、私はスキューバダイビングのインストラクターでした。
インストラクターとは、指導する人。
スキューバダイビングのインストラクターは、スキューバダイビングのやり方を教えます。
コースや学習内容を決めるのはインストラクターであり、
学習者はその真似をします。
教師主導であり、自律的ではありません。
デモンストレーターとは?
デモンストレーターはちょっと聞き慣れない言葉です。
ですが、デモンストレーションなら聞いたことがあります。
デモンストレーションとは、実際にやってみること。
だから
デモンストレーターとは、実際にやって見せる人
教師がデモンストレーターとして、実際にやって見せて、学習者がそれを真似するのであれば、やはり自律的ではありません。
オピニオン・リーダーとは?
オピニオン・リーダーはときどき聞く言葉ですが、意味がぼんやりしているので、あらためて考えてみます。
オピニオン・リーダーとは、オピニオン(意見)のリーダー。多くの人の意見に影響を与える人。世論誘導者とも。例えば、有名なインスタグラマーが「この化粧品いいよ!」と言ったら、多くの人がその化粧品を買ったり。
教師がオピニオン・リーダーだとすれば、学習者は教師の意見についていくということ。
やはり、自律的とはいいがたいです。
以上より、答えは1です。
問3の解き方【自律学習を支援するシステムとは】
「自律学習を支援するシステムの構築」の際に教師が行うことは何でしょうか。
学習者が自律的、主体的に学習できるようにそのサポートです。
教師主導にならぬよう。
教師はあくまで黒子
主人公は学習者
それぞれの選択肢を見て、学習者が主役、教師がサポート役になっているか
教師が一方的にではなく、学習者の主体性があるか確認しましょう。
個人カリキュラム実例集の蓄積
学習者が自らの個人カリキュラムを作る際に、実例集があれば役立ちます。
学習者が主役で、教師がサポート役ですね。
効率的な学習シラバスの設定
学習シラバスとは、どのようなことを学ぶのか学習内容が書かれたもの。
学習内容を教師が設定するのは、教師が主役です。
学習者間ネットワークの推進
学習者間のネットワークがあれば、学習者が自律学習をする際に役立ちます。
学習者が主役で、教師がサポートしています。
教師のオフィスアワーの開設
オフィスアワーとは、この時間には教師がいて学習者の相談にのりますよというもの。
自律学習で困ったときに教師に相談できます。
学習者が主役で、教師がサポート役です。
以上より、答えは2です。
問4の解き方【リソースの種類の見分け方】
自律学習に利用できる人的リソース、物的リソース、社会的リソースの具体例を選ぶ問題です。
実はこの問題
令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4でも問われています。
令和元年度は【日本語学習における社会的リソース】の例を選ぶ問題でした。
二度あることは三度ある。
三度目に備えて
具体例を、人的リソース、物的リソース、社会的リソースに分ける方法を理解しておきましょう。
リソースとは?
リソース(resource)を和英辞書で調べると、資源、教材、財産、と出てきます。
教材とは、学習するための素材、学習に役立つ素材
そう。
日本語学習のリソースとは、学習に役立つ素材のことです。
人的リソースとは?
日本語学習の人的リソースとは、日本語を学習するときに役立つ人のことです。
人的リソースの例)教師、友人、同じクラスの学習仲間、近所の人、同僚
物的リソースとは?
日本語学習の物的リソースとは、日本語を学習するときに役立つ物のことです。
直接的な「物」だけではなく、日本語学習に役立つ「物」がある場所も物的リソースにカウントするので気を付けてください。
物的リソースの例)本、アニメ、webサイト、YouTube動画、美術館(美術館にある説明書きなどの「物」)、デパート(デパートの商品説明や日本語で書かれた掲示物などの「物」)
社会的リソースとは?
社会的リソースはちょっとわかりにくいですね。
社会的とは何なのでしょう?
辞書で調べてみます。
社会的とは、社会にかかわりがあるさま(大辞林)
え、じゃあ社会とは?
社会とは、生活空間を共有したり、相互に結びついたり、影響を与え合ったりしている人々のまとまり。また、その人々の相互の関係(大辞林)。
大事なのは人との関わりですね。
日本語学習の社会的リソースとは、日本語を学習するときに役立つ人との関わりのこと。
社会的リソースの例)地域のボランティア活動、学校のサークル活動、アルバイト、職場、Instagram、Facebookなどの各種SNS
各選択肢を見ていきましょう。
人的リソース | 物的リソース | 社会的リソース | |
---|---|---|---|
1 | 教師:人的リソース | デパート:物的リソース | 地域住民:人的リソース |
2 | アルバイト:社会的リソース | 辞書:物的リソース | 学校のサークル活動:社会的リソース |
3 | 職場:社会的リソース | 教科書:物的リソース | 新聞:物的リソース |
4 | 友人:人的リソース | 美術館:物的リソース | 自治会でのボランティア活動:社会的リソース |
以上より、答えは4です。
問5の解き方【教師と学習者が協力して自律学習】
これも問1から問3と同じです。
教師の一方的になっていないか?
教師がサポート役になっているか?
各選択肢を見ていきます。
選択肢1
学習の進捗状況の報告を受けて、アドバイスするなど教師がサポートします。
選択肢2
学習者と話し合いながら決めるので、教師が一方的にではありません。
選択肢3
促しているだけで、強制ではありません。
教師が一方的にではなく、学習者をサポートしています。
選択肢4
授業では教師が学習内容を決めます。サポートの範囲を超えています。
よって、答えは4です。
試験勉強を日本語教師の仕事につなげよう
最近、よく言われる
今日の役割を聞いたことがありますか?
そう。
ファシリテーターです。
昔の授業のスタイルは、教師が学習者に知識を伝達するというものでした。
しかし最近はそうではなく。
学習者が主体的に学び
教師は学習者をサポートするファシリテーターであれ
と言われます。
あれ?
ファシリテーターなんて言葉、問2の選択肢にはなかったぞ?
そうです。
よく使われる言葉はあえて避ける
難しく言い換える
これが日本語教育能力検定試験のやり口です。
覚えておいてください。
ファシリテーターとは、進行役のこと。
踊る!さんま御殿!!のさんまさんです。
トークの主役はゲストです。
さんまさんはゲストのトークを盛り上げるために尽くします。
教師も同じです。
学習者のトークを盛り上げるために尽くします。
どんなやり方があると思いますか?
例えば私は質問されても基本的には答えません。
他の学習者に話を振ります。
なるべく教師の発話が少なくなるよう努めます。
みなさんも授業の時
主役は学習者ということを忘れないでください。