H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰの問題11【言葉の乱れ】の解説です。
国語に関する世論調査は毎年出ており、ニュースにもなるので見ておきたいですね。
最新版の令和元年度では以下のような調査がありました。
「てをこまねく」はどちらの意味だと思いますか?
①何もせずに傍観している
②準備して待ち構える
答えはこの記事の最後です。
問1の解き方【ら抜き言葉の例】
ら抜き言葉といっているのだから、本来は「ら」があるということ。
各選択肢に「ら」を入れてみて
具体的な文を考えてみて
「できる」の意味になるものを選びましょう。
- 切られる (切ることができるの意で)このはさみはよく切られるよ×
- 売られる (売ることができるの意で)過去問はメルカリで売られるよ×
- 書けられる (書くことできるの意で)このペンは小さい字が書けられるよ×
- 考えられる (考えることができるの意で)考えられる理由は何ですか〇
よって、答えは4です。
れ足す言葉とは?
選択肢3の「書けれる」は「書ける」に不要な「れ」がついているレタス言葉です。
れ足す言葉とは、第1グループの動詞の可能形に「れ」を足すこと
例)
書ける→書けれる
話せる→話せれる
読める→読めれる
ら抜き言葉とは?
ら抜き言葉とは、第2グループ動詞の可能形「られる」が「れる」になること。
例)
食べられる→食べれる
見られる→見れる
寝られる→寝れる
第1グループの動詞とは?
第1グループの動詞とは、「ーない」をつけたときに「anai」になる動詞です。国語文法でいう五段動詞
例)
書かない(kakanai)
話さない
読まない
第2グループの動詞とは?
第2グループの動詞とは、「ーない」をつけたときに「inai」「enai」になる動詞です。国語文法でいう一段動詞
例)
食べない(tabenai)
見ない
寝ない
第3グループの動詞とは?
第3グループの動詞とは、「する」と「来る」です。国語文法でいうサ行変格活用動詞とカ行変格活用動詞
ら抜き言葉を使いたくなる2つの理由とは?
理由1 1グループの可能形と同じに形にしたいから
1グループの可能形は「eru」です。
書ける kakeru
話せる hanaseru
読める yomeru
だから2グループの可能形も「eru」にしたほうが分かりやすいです。
食べれる tabereru
見れる mireru
寝れる nereru
理由2 受身形や尊敬形との違いを分かるようにしたいから
「食べる」
受身形は「食べられる」 私はゾンビに食べられた。
尊敬形は「食べられる」 先生は朝食を食べられた。
可能形は「食べられる」 私はゾンビが食べられた。
「食べられた」だと受身なのか尊敬なのか可能なのかわかりません!
そこで、可能の意味の時は「ら」を抜きましょう!
「食べれる」
「食べれる」は可能の意味しかありません。
ナイス発明! わかりやすいです。
問2の解き方【さ入れ言葉流行の原因】
「帰らせていただきます」を「帰らさせていただきます」と言うような「さ入れ言葉」が流行っているのはどうしてでしょうか。
さ入れ言葉とは?
さ入れ言葉とは、第1グループ動詞の使役形「せる」が「させる」になること。
例)
書かせる→書かさせる ×
読ませる→読まさせる ×
(話させる→話ささせる×)
さ入れ言葉を使ってしまう理由
第2グループ動詞(一段動詞)の使役形は「させる」です。
例)
食べさせる
見させる
寝させる
最近は「させていただく」という謙譲語が大流行しています。
謙譲語は「~させていただく」とひとまとまりで覚えてしまっている人も多いです。
そういう人たちがつい第1グループの動詞(五段動詞)でも
「書かさせていただく」「読まさせていただく」「実家に帰らさせていただきます」と使ってしまいます。
よって、答えは3です。
選択肢1と2は「ら抜き言葉」に関する記述です。
選択肢4は変なことを言っています。
可能を表す一段動詞の形式は五段動詞のために使われています。
例)書く(五段動詞)→書ける(可能を表す一段動詞)
さ入れ言葉とは関係ありません。
最後に
「させていただく」に関する面白い記事がありましたのでご紹介します。
人はなぜ「させていただく」に違和感をおぼえる? 言語学者が解き明かす“敬意のインフレーション”
問3の解き方【言葉の乱れとは】
「言葉の乱れ」に関して正しそうなことを言っているのはどれか。
選択肢を見ていきましょう。
選択肢1
「ら抜き言葉」や「さ入れ言葉」を社会的に優位な立場にある人ばかりが使っているとは思えません。
選択肢2
「ら抜き言葉」や「さ入れ言葉」は特に話し言葉で頻繁に表れます。
やはり話す言葉はいい加減になったり、省略されたりしがちですね。
LINEなどのチャットは話し言葉的でメールは書き言葉的なのも面白いです。
選択肢3
私は「ら抜き言葉」は素晴らしいと思っていますが、「ら抜き言葉」を使わない人にとっては、言葉の乱れと位置づけられます。
選択肢4
「言葉の乱れ」と「言葉のゆれ」は、今までの言い方と新しい言い方がある場合に、新しい言い方をどう捉えるかの違いです。長期的、一時的は関係ありません。
よって、答えは3です。
「言葉の乱れ」と「言葉のゆれ」の違いとは?
文化庁の国語審議会によると「言葉の乱れ」と「言葉のゆれ」の違いは以下の通りです。
言葉の乱れとは?
言葉の乱れとは、価値判断を持った捉え方
言葉の乱れと考える人の例)
「食べれる」は、ら抜き言葉だから間違っている!「食べられる」が正しい!
言葉のゆれとは?
言葉のゆれとは、客観的な捉え方
言葉のゆれと考える人の例)
「食べられる」と「食べれる」、今は2つの言い方があるんだねえ。
国語に関する世論調査令和元年度版
本問は平成26年度の調査とちょっと古いので、これからの試験対策では
令和元年度「国語に関する世論調査」の結果についてを見てください。
国語が乱れていると思うか?
「乱れていると思う」と回答した人
平成26年度 令和元年度
73.2% → 66.1%
国語がどのような点で乱れていると思うか?
1位 敬語の使い方 63.4%
2位 若者言葉 61.3%
3位 新語・流行語の多用 34.3%
4位 挨拶言葉 32.2%
5位 発音やアクセント 20.8%
6位 外来語・外国語の多用 17.5%
問4の解き方【新語・流行語】
流行とは、一時的に広まること
選択肢3のように、次の世代に引き継がれたらそれは流行ではなく、定着したものになります。
よって、答えは3です。
問5の解き方【言葉の変化】
答えは1です。
選択肢2から4は、本来の意味と若い世代の解釈が逆になっています。
参考
試験勉強を仕事につなげよう
日本語教師たるもの
国語に関する世論調査は見ておきたいですね。
「てをこまねく」はどちらの意味だと思いますか?
①何もせずに傍観している 40.1%
②準備して待ち構える 45.6%
本来は、①の意味です。
以前、令和元年度の国語に関する世論調査を一緒にチェックしようライブをしましたのでよかったらどうぞ。