平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題12は【文化によって好まれる会話スタイルは異なる】です。
問1
日本語の会話の特徴は、共同発話だと言われています。共同発話とは、話者全体で一つの発話を作り上げることです。一方、英語など多くの言語では、相手が言い終わってから自分の順番(ターン)が来るという話者交代の規則に忠実です。
岡本佐智子著『日本語教育能力検定試験に合格するための社会言語学10』の96頁に詳しい説明があります。
制度的談話(制度的会話)とは、問題4で出てきた教室談話や裁判の審理など、制度的な場面での談話のことで、誰がいつ話すのか決まっている場合が多い、どのような発話をするのか決まっている場合が多い、達成すべき課題がある場合が多い、などの特徴があります。
関連性の公理は、協調の原理の4つの公理の一つです。
平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題11でも問われていますので、要チェックです。
1,量の公理…多すぎても少なすぎても駄目。
2,質の公理…嘘や根拠なしは駄目。
3,関連性の公理(関係の公理)…関係ないことは駄目。
4,様式の公理…曖昧は駄目。
アルクの『日本語教育能力検定試験に合格するための社会言語学10』の121頁に、会話が4つの公理のどれに違反しているか選ぶ問題があります。
よって、正解は3です。
問2
日本語の特質=高コンテクストは、平成27年度 日本語教育能力検定試験Ⅲ 問題4の問5でも出題されています。
高コンテクストと低コンテクストの違いは、平成23年度 日本語教育能力検定試験Ⅲの問題12の問5でも出題されています。
出題頻度が高いので、高コンテクストと低コンテクストは超重要キーワードです。
正解は1です。
罪の文化といえば、欧米です。
恥の文化といえば、日本です。
詳しくは、安藤邦男『罪を意識する英米人、恥を意識する日本人』をご確認ください。
問3
1,明確化要求は、試験Ⅰの問題8に出てきた意味交渉の一つで、相手の発言が不明確なときに明確にするよう要求すること(聞き返しの一種)です。
2,割り込みは、現話者の発話の途中で聞き手が発話することです。
3,ターンの保持は、話す順番を譲らないことです。
4,オーバーラップは、話し手と同時に発話することです。
研究社日本語教育事典の142頁に『聞き手行動』という項目があります。それによると、
聞き手行動には、
①相づち
②聞き返し
③オーバーラップ
④割り込み
⑤フィードバック
などがあります。
以上より、ターンの保持は話し手の行動
よって、正解は3です。
問4
リペア(修復)とは、発話の途中で、すでに述べた発言を修復する行動(研究社日本語教育事典の157頁より)。
1は、すでに述べた発言「先週見ます」を、「先週見ました」に修復していますので、リペアです。
よって、正解は1です。
問5
1,聞き手の役割に徹していたら、「何も話すことがないのか」「話に参加しないってことは興味がないってことなのか」などと思われて「不利な評価を受ける」可能性があるでしょう。また、1のようなパターン・プラクティスでは、実際の会話で応用するのは難しいでしょう。
よって、正解は1です。