平成25年度(2013年)日本語教育能力検定試験Ⅱ(聴解)の問題4は発話の特徴と問題点です。
1番
問1 形容詞の活用のルール
ナ形容詞の否定形は、「な」を「ではない」に変える。
例)好きな→好きではない
イ形容詞の否定形は、「い」を「くない」に変える。
例)美しい→美しくない
しかし学習者は、「好きな」「上手な」というナ形容詞の否定形に、「好きくない」「じょうずくない」と、イ形容詞のルールを用いています。
よって、正解はcです。
問2 学習者の誤りに対して教師がとった行動
「りんさんは納豆が好きですか?」「好きくないです」「えっ。好きですか?」
「りんさんは料理をよくしますか?」「料理はじょうずくないですから…あまりしません」「えっ。料理はどうですか?」
このように学習者の誤りに対して教師は聞き返して自己訂正を促しているので、正解はdです。
2番
問1 学習者が今していること
学習者は聞いた音声をすぐさま復唱していますので、シャドーイングです。
よって、正解はbです。
なお、
ディクトグロスとは、教師が読み上げたテキストの意味を学習者が協働で再構築することです。平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題8問5で出題されていますので、そちらも要チェックです。
リピーティングとは、聞いた音声を繰り返し声に出すこと。但し、聞きながら声に出すシャドーウィングと異なり、聞き終わってから発音します。
ディクテーションとは、読み上げられた言葉の書き取りです。
問2 学習者に必要な指導項目
学習者は
「ひがし」を「ひかし」
「かんとう」を「かんどう」
などと発音していますので、有声音・無声音の指導が必要です。
よって、正解はbです。
3番
問1 教育実習生の話し方の特徴として当てはまらないもの
a 助詞の卓立(たくりつ)
卓立とは他より強く言ったり高く言ったりして際立たせることです。プロミネンスともいいます。
この教育実習生は、助詞を強調した話し方はしていません。
よって、正解はaです。
b 文末の引き伸ばし
「えっとお」「んでー」「ですけどお」
と文末をを引き伸ばしています。
c アクセントの平板化
アクセントの平板化とは、もともと起伏式で発音されていた語のアクセントが、平板式に変化する現象のことです。
「カード」のアクセントは本来「高低低」なので、アクセントの下がり目がある起伏式です。ところがこの教育実習生は「低高高」と平板式で発音しています。ギャルに違いありません。しかも強烈なアニメ声…。
d ラ抜き言葉
五段活用の動詞は、下一段活用の動詞に変化することで、可能の意味を持ちます。
例)会う→会える
一方、一段活用の動詞で可能の意味を表すには、「ラレル」と使わければなりません。 例)捨てる→捨てられる
しかしながら、「ラレル」には、自発・受身・尊敬という意味もありますから、「ラレル」が可能の意味を表しているのか、他の意味を表しているのか判別し難い場合があります。
例)先生はタイ料理を食べられなかった
→可能なのか尊敬なのか、分かりません。
どうしましょう?
そうだ!
一段動詞でも「レル」を使って、五段動詞みたいに可能動詞化してしまえば、他の意味はないから分かりやすいぞ!
例)先生はタイ料理を食べれなかった。
→可能の意味。
これがラ抜き言葉です。
本問の教育実習生は、「捨てられません」を「捨てれません」と言っているので、ラ抜き言葉を使っています。
問2 留学生が誤解した原因
教育実習生が「数が一緒だったら捨てる感じでお願いしまぁーす」と言ったため、
学習者は「捨てるとき漢字で書きますか」と誤解しています。同音異義語です。
よって、正解はcです。
なお、
a 言いさしとは、文の途中で止める(言い切らない)表現です。
例)お願いがあるのですが(言いさし)
お願いがあります(言い切り)
b 縮約形とは、本来の表現を短くすること。
例)捨ててしまって→捨てちゃって
d 媒介語とは、例えば日本語を教える時に英語を使って説明する場合、英語は媒介語といえます。