【過去問解説】平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3D

H25試験Ⅰ
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新解説(18)

日本語教育能力検定試験ではたまに一般的ではない学説や用語が登場します。

そのような問題はほとんどの受験者ができないので気にする必要はありません。令和3年度以降は正答率もつけていますので実際に正答率を確認してみてください。

今回の問題(18)も一般的ではない問題です。

因果関係を表す「複文」とは、条件文のことです(現代日本語文法⑥p93)

現代日本語文法では条件文を以下の4つにわけています。

順接逆接
仮定的酒を飲むと頭が痛くなる(順接条件節)酒を飲んでも頭が痛くならない(逆接条件節)
事実的酒を飲んだので頭が痛くなった(原因・理由節)酒を飲んだのに頭が痛くならなかった(逆接条件節
現代日本語文法⑥p94より

現代日本語文法⑥では

仮定的なものには、順接的なつながりの「順接条件」、逆接的なつながりの「逆接条件」がある

事実的なものには、順接的なつながりの「原因・理由」、逆接的なつながりの「逆接条件」がある

としています。

ところが本問では

仮定的なものには、順接的なつながりの「条件」、逆接的なつながりの「並列 or 比況 or 譲歩 or 否定」がある

事実的なものには、順接的なつながりの「原因・理由」、逆接的なつながりの「逆接」がある

となっており、分け方が異なります。

現代日本語文法にも載ってないような分類は知らなくても全く気にする必要ないです。

あの膨大な知識量の現代日本語文法にすら載っていないことが出る。

これが日本語教育能力検定試験の恐ろしさであり、分からない問題は飛ばそうと言っている理由です。

ただしこの問題は知識ではなく、読解力で解くことができます。

まず、仮定的逆接的なつながりの例文を考えます。

酒を飲んでも頭がいたくならない。

これが「並列」「比況」「譲歩」「否定」のいずれかを考えます。

並列とは、並びつらなること。

「酒を飲んでも」と「頭がいたくならない」は逆接的なので「並びつらなる」とは言い難いです。

並列の例)休日は本を読んだり散歩したりします(現代日本語文法⑥p273)

比況とは、他にくらべてたとえて言う言い方。口語では助動詞「ようだ」「みたいだ」(大辞林より)

比況の例)雪みたいに白い。

「酒を飲んでも」と「頭がいたくならない」は比べて例えているわけではありません。

譲歩とは、自分の主張の一部または全部をまげて、相手の意見と折り合いをつけること。

「酒を飲んでも頭がいたくならない」には、普通は酒を飲んでも頭が痛くなるはずなのにおかしいなあという気持ちが含まれています。気持ちは「頭が痛くなる」なのに実際は「頭がいたくならない」だから譲歩しているとも言えます。

否定とは、そうではないと打ち消すこと

「酒を飲んだこと」を否定しているわけではありません。

以上のとおり、消去法で「譲歩」以外の選択肢がおかしいので、答えは3です。

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旧解説

平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題3のDは【複文】です。

(16)
単文とは、述語が1つある文。
複文とは、述語が複数ある文。
よって、正解は2です。 

(17) 因果関係を表す複文のうち、順接的なつながりの「原因・理由」の用法例を選ぶ問題です。
1,会議が長引いた「原因・理由」は、役員が遅刻したことなので、「原因・理由」の用法です。
2,急いで走っていった「目的」は、「電車に間に合うように」です。 
3,「逆接」です。
4,「会う」ことと「大きくなっている」ことに因果関係はありません。
よって、正解は1です。

(18)
「逆接的なつながり」なので、「1並列」ではないとすぐに分かります。他の選択肢はじっくり見てみます。
大辞林によると、
2,比況…他と比べること。
3,譲歩…自分の主張の一部または全部をまげて、相手の意見と折り合いをつけること。
4,否定…そうではないと打ち消すこと。
という意味です。
逆接(に接続)。
比況には、の意味がないので、「2比況」ではなさそうです。3と4は単語の一般的意味から削るのが難しいので、「仮定の逆接」の具体例を考えてみます。
例…懐かなかったとしても、僕はあの猫が好きだ。
「否定」はしてないですね。
というわけで、消去法的に「譲歩」が残りました。
実は、加藤重広著『日本文法入門ハンドブック』115頁によりますと、「文法における譲歩(concessive)とは、一般的な考えや念頭にある概念を後退させて別の可能性を検討する余地を作ることを意味する」そうです。
上の例で言えば、「懐くから好き」という一般的な考えを後退させて、「懐かなくても好き」という別の可能性を示しているので、譲歩といえます。
よって、正解は3です。

(19)
反事実条件」の複文を実際に作ってみます。
1の例…あの猫が生き返るなら、僕は一生独身でもいい。
すぐに思い浮かんだので、まれとはいえなさそうです。
2の例…思い浮かびません。
3の例…思い浮かびません。
4の例…あの猫を飼えばよかったのに。
後件に「のに」を使うことができました。

2と3が残ってしまったので、「例外を認めない選択肢は誤りの可能性が高い」ストラテジーを使います。2は「まれ」と例外を認めているのに対し、3は「できない」と断言しています。
よって、正解は2です。

(20)「複文」を構成する接続助詞を終助詞的に使う用法の例を選ぶ問題です。
接続助詞ということはその後に文が続くはずなので試してみます。
1,これ、道に落ちていたんです、あなたのですか。
2,今日中に終わらなかったら、許さないから、ご飯おごりなさいよ。
3,だから、やめときなよ。危ないって言ってるでしょ。
4,私はこれで。明日、会社もあることだ、帰ります。

全ての選択肢で文を続けることができましたが、3だけ雰囲気が違いますね。
3の「って」は、接続助詞(節と節をつなぐ役割)ではなく、格助詞です。詳しくは、デジタル大辞泉の解説をご参照ください。
よって、正解は3です。

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